研究課題/領域番号 |
20K00259
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田中 晋平 日本大学, 芸術学部, 研究員 (90612870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自主上映 / ミニシアター / 公共上映 / 美術館 |
研究実績の概要 |
本研究では、1980年代に日本全国で展開された非商業的な上映活動として、自主上映グループやシネクラブの活動および美術館やフィルムライブラリーなどの文化施設で開催された上映会の実態を検証していく。今年度の実績は以下となる。 ①「スクリーンの行方と自主上映―中之島映像劇場④―」『国立国際美術館ニュース』239号、国立国際美術館発行、2020年8月。コロナ禍の映画館の苦境やオンライン配信に触れた上で、ミニシアターの登場に繋がる1970-80年代の非商業上映の活動を紹介。小川プロダクション『1000年刻みの日時計―牧野村物語―』の上映のために1987年夏の京都で設置された〈千年シアター〉の存在についても解説を行なった。 ②「プラネット・プラスワン」『2020年、大阪の小さい場所におこったこと~「新型コロナウイルス感染症拡大影響下における50人未満のアート拠点ピックアップ調査』大阪大学大学院文学研究科アートメディア研究室・古後奈緒子研究室発行。1974年に設立された〈プラネット映画資料図書館〉を前身とする大阪の〈プラネット・プラスワン〉というスペースの歴史を紹介。同施設の新型コロナウイルスの影響への対応なども報告した。 ③招待講演:田中晋平「〈自主上映とミニシアター〉ー1980-90年代の上映文化の変化ー」『プラネット・プラスワン25周年記念企画』於プラネット・プラスワン、2020年12月。関西におけるかつての自主上映からミニシアターに至る歴史を、具体的なスペースをあげて解説した。 ④招待講演:田中晋平「チラシに見る関西自主上映の歴史」『映画チラシの世界 アクティブ・アーカイブ・プロジェクト』於神戸映画資料館、2021 年2月(オンライン配信あり)。神戸映画資料館所蔵の映画チラシの整理・保存活動を紹介し、かつて自主上映グループが発行したチラシを貴重な地域の映画文化として解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、当初の資料調査の計画やインタビューの実施予定を大幅に変更せざるを得なくなってしまったことが、研究の遅延の最大の理由である。不要不急の外出を制限された状況が続くなかで、筆者の居住地域と比較的距離が近い〈国立国会図書館関西館〉や〈神戸映画資料館〉などに数回調査に赴くことはできたが、残念ながら当初に予定していた映画上映の関連資料を保存している施設に訪問することができなかった。基礎的な資料の調査に躓いたことの影響から、講演や研究報告などで一部の成果もアウトプットできたのだが、学術論文の執筆・投稿まで到達できなかった。 一方でコロナ禍において、演劇や音楽などの他の文化事業への補償の問題とともに、映画上映に対する公的支援の役割が、かつてないほど問われる時代が訪れた。その時代状況において、本研究が試みようとしてきた映画上映の公共性をめぐる歴史の掘り起こし作業は、ますます重要な意義を帯びてきたと考えざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、本研究の基礎となるための資料の調査活動を実施できなかったが、今後は感染症対策を十分に行うことを前提として、国内の主要な映画上映に関連する資料を収蔵している施設に訪問していきたい。具体的には、予定通りに調査が進められていなかった美術館や図書館など、公共文化施設において開催されてきた映画上映会についての資料収集とインタビューを実施する。特に1980年代後半の美術館や複合文化施設で展開された、映像作品(ビデオアートや個人映画・実験映画)の収集と展示上映の歴史について、積極的に調査を進める予定がある。また、調査の成果として学会誌などへの論文投稿、学会発表も円滑に行えるように綿密なスケジュールを立てていきたい。 なお、筆者が客員研究員として勤務している、〈国立国際美術館〉における映像上映の活動と歴史をまとめ、論考の執筆やイベントのかたちで公表をしていく計画も現在進行中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、当初の研究計画内で予定されていた調査を、一部のみしか実施することができなかったため。 2021年度は感染症対策に十分に注意を払いながら、前年度の計画に含まれていた東京や地方都市のミニシアター、美術館・公立文化施設に改めて訪問し、調査を行う計画を立てている。これによって前年度に使用予定だった旅費、および調査対象となる施設での上映会の企画者らに実施予定だったインタビューのための謝金も費消される見込みである。
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