研究課題/領域番号 |
20K00259
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田中 晋平 日本大学, 芸術学部, 研究員 (90612870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自主上映 / ミニシアター / 公共上映 / 美術館 |
研究実績の概要 |
『国立国際美術館ニュース』241号に「あいまいな美術館の映像/資料 ―中之島映像劇場について⑦―」を執筆した。1980年代末から2000年代初頭に同館が収集したビデオアートとその上映に関して、当時の資料を調査・検討し、今後のアーカイブ化の展望も示した。その執筆と国立国際美術館での研究・調査を踏まえ、上映会「第21回 中之島映像劇場 美術館と映像―ビデオアートの上映・保存―」を企画し、同館でU-matic(3/4テープ)に保存されていたビデオアートのデジタル化を行い、2021年9月18日、19日の二日間にわたって上映を行った。また映像作家による1980-90年代の活動による証言を編集、配布資料として発行し、講演会やアフタートークも実施できた。 2022年2月23日に神戸映画資料館において「聞き書き神戸映画史 映画館の『危機』の記憶を探る」を開催した。新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う現在の映画館の危機的状況から振り返り、かつての阪神淡路大震災などの被害を乗り越えてきた神戸の映画館の記憶を改めて学ぶ研究会となった。 神戸映画資料館のロビースペースにおいて、2022年3月7日よりはじまった展示「チラシから辿る関西自主上映の歴史」を監修した。神戸映画資料館で収蔵しているノンフィルム資料(映画関連資料)から、関西各地で1970-80年代頃に現れた自主上映グループの活動について、その記録を留めたチラシや機関誌などの資料を展示し、解説文を付けた。 2022年3月6日に神戸映画資料館において「関西自主上映史の掘り起こし 1970-80年代」を開催し、研究発表「プラネットと1970-80年代の関西自主上映の地層」を行った。発表内では、1974年に大阪で開設したプラネット映画資料図書館の上映活動を中心に据え、関西の自主上映グループとその活動が果たした歴史的役割を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に続いて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、当初計画していた資料調査やインタビューの実施予定を変更せざるを得なかったこと、さらに大学でのオンライン授業の対応などイレギュラーな作業が増えたことから、十分に調査と研究のための時間を確保できなかった。筆者の居住地域に近い神戸映画資料館には、複数回調査に赴き、同館における展示企画や研究発表を行うこともできたのだが、その他の映画関連資料の保存施設などへの訪問は限られてしまった。そのため所属学会での研究発表、学術論文の執筆・投稿にも遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、美術館や図書館など、公共文化施設における1980-90年代の映画上映の歴史については、集中的に資料の収集と調査を進め、成果も一部公表することができた。2022年度は、これまでに実施した関西での自主上映活動からミニシアターに至る流れのなかで重要な歴史的意義を担ったと考えられる、小川プロダクション『1000年刻みの日時計―牧野村物語―』(1986年)の上映用に京都に設置された劇場「千年シアター」の調査などを本格的に行い、当該期に転換をむかえたと考えられる日本の映画上映の文化について研究を進める予定である。また、神戸映画資料館の前身にあたり、大阪で長く自主上映活動を続けてきたプラネット映画資料図書館がこれまでに行ってきた上映活動のアーカイブ化も進めている途上にある。その成果については、日本映像学会大会(於京都大学)での研究発表が予定されており、さらに学会誌などへの論文投稿を積極的に行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に続き、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、当初の研究計画内で予定していた調査の一部を実施することができなかったため。2022年度は感染症対策に十分に注意を払いながら、改めて首都圏や関西圏のみでなく、地方都市で自主上映活動を続けてきた人々の活動に注目し、各地のミニシアターなども訪問しながら、聞き取りを含めた調査を行う計画を立てている。これによって前年度に使用を予定していた研究旅費、およびインタビューのための謝金の支出などが見込まれる。
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