研究実績の概要 |
古代粒金作品は現存するが、技法は途絶え現代に継承されていない。その中で「古代粒金作品は銅化合物で接合されている」という定説に基づき、科学者たち は粒金作品分析時に「銅の検出」の有無をポイントとしている。これは古代粒金技法発祥当時の文献に「クリソコラ」や「孔雀石」を 接合に用いたなどの記述 に由来する。本研究では、クリソコラや孔雀石に含まれるAl,Siなどの微少元素に着目し、実際に鉱物での粒金接合が可能かを熟練した金工作家が接合実験を行 う。その接合部を接合の研究者がSEM-EDSで評価し、鉱物のCu,Al,Siなどが、どの様に母材の金に拡散するかを検討する。その粒金の再現実験を通じて制作施 工方法を確立する。 令和3年度には、日本画の画材である顔料に使用する鉱物を入手し、粉砕した粉を使用して粒金接合の再現実験を実施し最適条件を検討した。国内外から材料を入手している7種類の鉱物の粉砕した顔料の組成分析を行った。その顔料を用いてろう材となる接合ペーストを作成し、粒金の接合実験を都 市ガスバーナーを用いて行った。カーボンブロックの上に接合試料を置き還元炎で加熱し還元雰囲気中での接合実験を行った。また、それらの顔料で作成したろう材のぬれ広がりおよび凝集状態を調査した。また、純銀板上に接合ペーストを塗ったものを電気炉還元雰囲気中で700℃,750℃,800℃,850℃,900℃,950℃で10min保持で加熱処理した結果、目視観察からは850度が適切だと判断された。 令和4年には、金アマルガムによる粒金接合実験を行った。それと並行して宝石輸入業者よりクリソコラを入手して粉砕し接合実験を行った。そのれらは、目視観察では接合可能であったが、強度測定の測定までには至らなかった。
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