研究課題/領域番号 |
20K00267
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
古川 安 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 客員研究員 (60181450)
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研究分担者 |
伊藤 憲二 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (90345158)
水島 希 叡啓大学, ソーシャルシステムデザイン学部, 准教授 (60432035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 女性科学者 / ジェンダーと科学 / 女子教育史 / 研究制度史 / 科学者 / 女子高等師範学校 / 津田塾大学 / 女子専門学校 |
研究実績の概要 |
日本における女性科学者の誕生についての系統的研究の2年度として、戦前・戦中期の女性研究者とそれを取り巻く制度についての基本データの収集とその分析を行った。初年度と同様にコロナ禍が続いため、当初計画していた各地の大学文書館への出張による史料調査が制限されたので、可能な限り活字文献資料を入手し、またデジタルアーカイヴ等を利用した情報収集に努めた。約100名の女性研究者(関連文献・史料に名前が出てくる科学に関わる日本の女性のうち, 1930年以前に生まれた研究者で初年度より母数を増やした)について出自、教育・研究経歴などのデータベースを作成し、プロソポグラフィ分析を行った。女子高等師範学校や専門学校が果たした役割、帝国大学への入学状況、教師再生産機構の成立プロセス、ロールモデルやメンターの存在、研究の場としての理化学研究所の役割などから、当時の研究教育制度の中で女性が研究者として進出する仕組みを検証した。 月に1回、定期的にオンライン・ワークショップを開き、研究代表者(古川)、研究分担者(伊藤・水島)、研究協力者の進捗状況の報告や、ゲストの研究者を招いての発表会を行った。研究協力者は中原理沙(アイオワ大学大学院生)、山田優佳(総合研究大学院大学院生)の2名。ゲストは山本美穂子(北海道大学大学文書館)、矢島道子(地質学史家)、一方井祐子(金沢大学准教授)の各氏で、大学史における女性、初期の女性地学研究者、日本における女性の理工系選択などについて発表して頂きディスカッションを行った。古川は明治期にアメリカの大学で生物学を専攻した津田梅子のキャリアを主題とした書籍を出版し本研究成果の一部を組み入れた。中原は学会・研究会で奈良女子大学の家政学部の設立、東京女子高等師範学校の物理学教育について発表(オンライン)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年度もコロナ禍で当初計画していた各地の文書館への出張して史料調査することが大幅に制限されたため、活字文献資料の入手、デジタルアーカイヴ等をもとにした情報収集が主な手段となった。これによって一定程度の基本データを作成したので、それをもとにプロソポグラフィ分析を進めた。また、オンライン・ワークショップを通して情報や意見の交換を活発に行い、研究内容やアプローチの理解を深化させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現地の文書館等で史資料調査を行わなければならないものもあるため、コロナ状況が緩和し次第、可能な限り当初計画した通りの出張による現地での調査を実行する予定である。活字資料収集・情報収集はこれまで通り継続する。これらによって収集した情報をもとに、戦前期の女性研究者の出自、家庭環境、研究内容、関係学会など更なるプロソポグラフィー的分析を実施する。また、各自の個別調査をまとめる作業を進め、秋に研究成果の発表会を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により当該年度も当初計画していた史料調査のための国内外の図書館・文書館への出張ができなくなったため、旅費の使用がほとんどなかった。代わりに、古書を含め活字資料を可能な限り購入・収集したため、旅費の多くを物品費に回したが、コロナ禍の状況が改善する可能性を考慮して次年度に史資料調査のための旅費等に充当することを考えた。なお、資料整理等の研究補助のためのアルバイトの採用を取りやめたため、人件費は使用しなかった。
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