研究課題/領域番号 |
20K00269
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
上藤 一郎 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (00281494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統計学の数学化 / 統計学史 / 国勢調査 / 統計制度 / 統計教育 / 数学教育 / 公算学 / 確率論史 |
研究実績の概要 |
本研究にある統計学史研究の新しい試みとして,現在のまでのところ,統計教育の制度的側面を中心に研究を積み重ねてきている。具体的には(1)東京帝国大学における統計教育,(2)旧帝国陸軍・海軍での確率論教育,(3)更に日本に限定せず国外の当時における統計学の数学化に関する動向について制度論的・実証的研究を続けている。まず(1)については,日本の大学で初めて統計教育をカリキュラムの中に取り入れて行ったのが東京帝国大学であることから,明治期~大正期にかけての統計教育の状況を学部別に検討を行った。特に着目すべきは,当時の統計教育は,統計学を数学ではなく国家科学の一領域として理解されていたことから,主に法学部と経済学部が統計教育の中核を担っていたことである。(2)については,日本で最初に確率論(公算学)のテキストを公刊させたのが陸軍士官学校であることから,主に陸軍を中心に確率論教育の目的と実態を検討した。現時点で明らかにし得たことは,陸軍における確率論教育は,普通学としての数学教育ではなく,射撃学との関連で軍事専門教育の一環として導入されたことである。また,陸軍士官学校が当初はフランス式の士官教育制度を導入していたことから,フランスの士官学校における数学教育(確率論教育)についても調査を進めてきた。また(3)については,特に近代統計学の定礎者とされるA.ケトレーの統計学とその数理統計学に対する影響について検討を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続きコロナ禍の影響により,本研究で最も重要な文献調査が当初の予定よりやや遅れている。東京大学や防衛研究所など東京方面での文献調査を予定していたが,前述の理由により外来者の訪問が制限されており,十分な調査を行うことができなかった。なお統計学関係雑誌のデータベース化はある程度進み,今後,データの分析作業に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本年度の最終年度ということもあり,遅れていた文献調査を進めていくとともに,研究計画にあったデータ解析にも力を注いでいくことになる。先ず統計教育関係の文献調査については,東京大学・一橋大学(旧東京商科大学)を中心に統計教育に関する文献・資料・史料等の調査を行う。確率論関係の文献については,防衛研究所を中心に文献・資料・資料等の調査を行う。また当時の研究動向に関する統計的分析については,『統計集誌』における論文テーマのデータ化を完了させた後,明治期における統計学研究の動向を数量的に分析し,その傾向を明らかにしていく。これに並行して,統計学及び科学史関係の学会報告を通じての研究成果の公表と研究成果を纏めた論文の執筆・公刊を併せて進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献調査が研究成果の報告(学会報告)に必要な旅費等がコロナ禍のためこれまでほとんど未使用であることから,次年度ではこれらの費用として使用する予定である。併せてデータ分析用のデータ作成が遅れたため,統計解析用ソフトウェアなどの購入が未使用であるため,ソフトウェアの購入にも使用する予定である。また当初の計画にはなかったが,研究成果を報告書として取り纏め公刊する予定であるためこのための費用としても使用を計画している。
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