本研究の目的は,幕末・明治期の導入期から第二次世界大戦期における日本の統計学について,①統計学史研究の新しい視座(第二の視座)に立脚して,②高等教育機関(研究者の再生産機能)と研究機関(研究の生産機能)を中心とした制度的側面と,③学術論文の研究テーマの統計的分析によって,④「統計学の数学化」に関する歴史的過程の実態を明らかにしていくことである.研究の成果としては,期間中(2019~2023年度)に,経済統計学会,日本科学史学会等を中心に約10本の研究報告を行い並行して,論文・著書等を通じて研究成果を公表した.具体的には,論文については,①統計学史の視点から見た『萬國政表』(立命館経営学・2023年度),②「ベルギーにおける第1回人口センサスとA. Quetelet」統計学(経済統計学会・2022年度),著書については①佐藤正広編『近代日本統計史』晃洋書房 (2020年,担当範囲:第2章「杉亨二とハウスホッファーの『統計学教程』」,第3章「第1回国勢調査と日本の統計学」),②坂田繁幸編『公的統計情報-その利活用と展望』中央大学出版部 (2019年,担当範囲:第11章「アドルフ・ケトレーの統計論」である.なお,申請書には,「統計の数学化」に関する制度的な実証研究として,統計数理研究所設立をめぐる歴史的経緯と社会的背景の分析を含めているが,この研究の成果については本年度,論文として執筆・公刊を計画している.また,期間中,関連研究として日本の確率教育を取り上げ,旧陸海軍の教育機関における実体を調査し,その成果を学会等で公表した.これら一連の研究も,本年度中に論文として公刊する計画である.
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