研究課題/領域番号 |
20K00279
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北島 雄一郎 日本大学, 生産工学部, 教授 (40582466)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 量子論 / 粒子 |
研究実績の概要 |
量子論における粒子の概念を考察するにあたって、今年度は西郷甲矢人・田口茂『〈現実〉とは何か』で述べられている「同じさ」という概念に注目した。本書によれば、可逆な自然変換を通じて、「同じさ」が成立する。例えば、目の前に机があるとしよう。視点をずらせば机の見え方は変わるが、元の位置に視点を戻せば机の見え方も戻る。このことから、机は「同じ」であると考える。この考察のポイントは、机という実体ではなく、机の見え方の変換に着目している点である。 本研究では、代数的場の量子論の枠組みで展開されるDHR理論をこの観点から考察した。この理論を取り上げた理由は、この理論が一見粒子という実体を扱っているように見えるからである。一方、代数的場の量子論では、粒子的な描像に対して否定的な結果がいくつかある。こうした矛盾するような状況を整合的に解釈するためには、DHR理論を粒子とは異なる観点から解釈することが必要であろう。今年度はその手がかりとして上で述べた書籍で述べられている観点をもとに、変換や関係の観点からこの理論を考察した。そして、DHR理論は、ある状態から他の状態への変換と、また別の状態から他の状態への変換の関係を記述する理論として解釈することができるということを論じた。このように解釈すれば、一見粒子を扱っているようにみえる理論であるDHR理論も、変換に関わる理論とみなすことができ、粒子的な描像に対して否定的な結果とも整合的に解釈することができる。 今後は、DHR理論のみならず様々な状況、さらにはより一般的な枠組みにおいて、量子論における粒子的な現象を変換の観点から考察していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DHR理論において粒子を変換の観点から考察することによって、粒子を変換の観点から捉えるきっかけをつかめたから。
|
今後の研究の推進方策 |
DHR理論のみならずより量子論のより一般的な枠組みにおいて、粒子を変換の観点を考察する。さらには、粒子概念と間接的に関わるような諸問題に対しても、従来のアプローチではなく、変換のアプローチから考察することを試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため学会や研究会が中止となり旅費を使用しなかったため、当初予定していた使用額より少なくなった。 次年度もコロナ禍の影響で学会や研究会などはオンラインで開催され旅費を使用しない可能性が高いが、その分は書籍などの購入のために使用したい。
|