研究課題/領域番号 |
20K00281
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
小林 和夫 創価大学, 文学部, 教授 (00546129)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 科学社会学 / 戦時科学史 / 軍産学複合体 / 医療 / 衛生 / 日本占領期 / ジャワ |
研究実績の概要 |
本研究では,日本占領期ジャワにおける軍産学複合体の形成過程と相互作用を明らかにする.このため,本研究では,医療・衛生という科学知が日本占領期ジャワで軍産学複合体を形成したと措定する.そして,本研究では,医療・衛生の科学知の具体例として,マラリアに薬効がある薬用植物・規那(キナ)に焦点をあてて考察する. 本研究の具体的な課題は,①戦前期における規那をめぐる軍産学複合体形成の萌芽,②規那栽培と日本企業,③ジャワ軍政における衛生・医療政策と規那,④ジャワ医事奉公会と薬草活用委員会―以上4点の分析である. 2020年度は,新型コロナ感染症の世界的流行で海外渡航がかなわず,オランダとインドネシアでの資料調査を断念せざるを得なかった.このため,2020年度の研究計画として予定していた上記①の課題で重要な位置を占める「オランダの倫理政策以降の蘭領東インド政庁の医療・衛生政策と規那に関する研究」に着手することができなかった. 2020年度の後半からは計画を変更し,日本の規那研究の歴史的背景,台湾における規那栽培の歴史・生産体制,規那研究の主体・機関・施設についての研究に切り替えた.おもな資料としては,インターライブラリーローンを活用した. 研究の結果,①東京帝国大学と京都帝国大学が台湾に所有していた演習林に,規那の造林がなされ,各種の試験が実施されていたこと,②台湾における規那の造林は,台湾の主要都市以外の地方だけでなく,沖縄の宮古島,八重山諸島,朝鮮,本州の一部の地域におけるマラリア対策のためであったこと,③両大学の規那造林と軌を一にして,星製薬会社が規那の造林を企図しており,同社の田代安定氏がジャワにわたり規那の種子を得ていたこと-などが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は,新型コロナ感染症の世界的流行で海外渡航がかなわず,オランダとインドネシアでの資料調査を断念せざるを得なかった.このため,2020年度の研究計画として予定していた上記①の課題で重要な位置を占める「オランダの倫理政策以降の蘭領東インド政庁の医療・衛生政策と規那に関する研究」に着手することができなかった.また,オランダとインドネシアで収集予定の関連する史資料も入手することもできなかった. 以上が本研究課題の2020年度の進捗状況を「遅れている」と自己点検で評価する理由である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナ感染症の収束が見通せず,現在も海外渡航の可否が判然としていない.このため,2021年度は,もっぱら,インターライブラリーローンで収集可能な史資料を用いて実施可能な「規那栽培と日本企業」に関する研究に着手する.具体的な研究課題は以下である.
ジャワ軍政から規那栽培の受命事業者となった武田長兵衛商店,南国産業株式会社,塩野義商店,星キナ産業株式会社,図南産業株式会社―5社の1)規那生産事業の歴史・経緯,2)規那生産の経営方針・人事配置,3)軍の規那生産への介入・統制,4)学術研究と規那生産―を課題とする. 史資料は,各社の年報・報告書・社史のほか,拓務省拓南局『南洋邦人農企業現況一覧』,『南洋栽培協会会報』,『南洋庁長官官房調査課調報』などを探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の世界的流行を起因とする、日本政府の海外渡航制限および所属大学の海外渡航禁止指示で、計上していた海外旅費を使用しなかったため。
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