研究課題/領域番号 |
20K00282
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (50351721)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デカルトの方法 / パッポス / クラヴィウス / 解析幾何学 / ディアレクティック |
研究実績の概要 |
デカルトにおける解析――パッポスとクラヴィウスを通した予備的考察――と題した論考において、以下の三点を明らかにした。 第一に、古代の解析とデカルトの解析幾何学との、論証構造の同型性である。パッポスによって示された解析の完全解は、解析を示した後に、総合の形式で証明を示すという、2つのパートから構成されている。解析はさらに、(1)未知の解を得られたと想定して既知の定理へ帰着させる「変形」、(2)帰着させた定理から作図へと演繹する「作図可能性」から成る。ところでデカルトの解析幾何学の手法は、まず、曲線が得られたと仮定して、その曲線を構成する諸線分へと帰着させること(要素化)、次いで、帰着させた諸線分の比例関係から曲線の方程式を導くこと(方程式化)から成っており、これは、上に見た古代の幾何学的解析における「変形」および「作図可能性」に相当する。 第二に、解析幾何学をモデルに構想された『方法序説』における四つの公準のうち第三の公準「もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、いわば段階を踏んで、もっとも複雑なものの認識まで登っていくこと」は、一般的に「総合」と称されてきたが、論証構造的に見るならば、「解析」における二つめのステップである「作図可能性」に相当するものであり、それゆえ、デカルトの「方法」は全体として解析(分析)の普遍化として理解できる、ということである。 第三にこうした思惟枠は「解析」の枠内で「総合」が果たされていると見做すことができ、それは「総合」の枠内で「分析」を行うスコラ的な伝統さらには数学者でありながらそうした思惟枠を色濃く受け継いだクラヴィウスのような16世紀の学問論から、決定的な転換を果たすものであった、ということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「デカルト『幾何学』と方法――『規則論』から『方法序説』へ」と題した口頭発表原稿において、1)『方法序説』における四つの公準が、『幾何学』において機能する仕方について検討し、2)四つの公準の揺籃の地と考えられる『規則論』と『幾何学』の関係を、直観、演繹、快挙、記憶という四つのステップないし観点から考察した。この研究は、本年度の成果を受けて次年度の研究テーマとなる予定であったが、年度内に予想以上に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、論点を数学に絞り、自然学をも含むデカルトの方法一般についての解明に向けた予備的考察を行ったが、数学には存在しない、あるいは重視されない諸論点があえて捨象されている。経験、観察の問題、論証における因果性の問題などである。さらに本年度は、「幾何学」を除いてデカルトのテキストをほとんど体系的に論じていない。まずは『規則論』の比例論や論証の学を通して、「方法」が生み出されるプロセスを検討する必要がある。さらに同時期の科学的実践と考えられる「屈折光学」を通して、デカルトの方法の具体を明るみに出す必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによって海外出張が不可能になったため。次年度は、海外出張を予定している。
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