研究課題/領域番号 |
20K00283
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
小野 尚香 畿央大学, 教育学部, 教授 (70373123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経発達症群 / 支援システム / チャイルドヘルスプログラム / 保護者支援 / スウェーデン |
研究実績の概要 |
COVID-19感染症蔓延にあり、スウェーデンでの現地調査を行えなかった。そのため、現地で予定していたブリガンの専門職スタッフ(医師、看護師、心理師、理学・作業・言語に関するセラピスト並びにソーシャルワーカー)に対するインタビュー調査を断念した。 今年度、この研究において遂行できたこと並びに成果は以下の3点である。 ① 1994年以降、現在のブリガンの出発点であるリソースセンターとしての活動並びにブリガンとしての25年にわたる活動を記した新聞記事や紹介文を30本、並びに行政報告書を入手し、現在、翻訳中である。1996年Arbetarbladet 掲載のリソースセンター開始の記事については、2021年6月発行『醫譚』113号に掲載予定である(現在印刷中)。また、この記事に関して、ブリガンの創設者である医師と現在の代表である精神科専門の看護師に対して、その内容と意訳に対する確認のため、メールでのやり取りを行った。 ② 現在のブリガンの活動内容と社会的機能については、「スウェーデンにおける神経発達障害医療~地域に根差した幼児期における支援システム」と題して、『発達障害研究』に発表した。こちらについても、両者へのインタビュー調査を基にしている。 ③ ブリガンの活動の前段階にある行政サービスとしての小児保健センターにおけるチャイルドヘルスプログラムに注目し、スウェーデン政府がインターネットでアクセスできる形で公開しているプログラムやガイダンスを参考に、乳児期並びに幼児期の精神運動発達について整理し、「乳児期の精神運動発達の評価とその特徴~スウェーデン“Barnhalsovardsprogrammet”から~」「幼児期の精神運動発達の評価とその特徴~スウェーデン“Barnhalsovardsprogrammet”から~」と題して、日本医史学会関西支部機関誌『醫譚』に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的なCOVID-19感染症蔓延のため、スウェーデンへの渡航が難しく、予定していたスウェーデンにおける現地調査を断念した。そのため、ブリガンのスタッフである、医師、看護師に加えて、心理士、特別支援教育指導教員、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーの活動内容に関するインタビュー調査を行うことができなかった。同様に、ブリガンの支援を受けている子どもの保護者に対するインタビューを行うことも断念した。スタッフや保護者の中にはスウェーデン語しかできない人もおり、英語とスウェーデン語の通訳に入ってもらい、オンラインでインタビューすることも躊躇した。 本年度、実施できたことは、ブリガンの活動を新聞記事や行政報告書、また外部評価から検討していくことであった。新聞記事等などのブリガンの記事を30件収集し、その翻訳に取り掛かっている。その一方で、ブリガンの主導者であった医師と、スタート期から現在に至るまでスタッフとして活動に従事している精神科専門の看護師に対して、メール上で、資料の翻訳(意訳)に対する確認や現在の活動に対する情報を得ている。その結果を、「スウェーデンにおける神経発達障害医療~地域に根差した幼児期における支援システム」と題して、『発達障害研究』に発表した。並行して、ブリガンの前段階である小児保健センターにおけるチャイルドヘルスプログラムについて、精神運動発達に関わるチェツクリストとフォローアップの要点を整理して学会地方誌に発表した。 また、本スウェーデンにおける発達障害者への支援と比較する参考資料として、精神疾患(現在の発達障害の状態も含むと思われる)の人に対する運動療法や作業療法について明治期京都の資料から整理し、スウェーデンでの実践と比較するために、大学院生等と共に、発達障害のある生徒に対する取り組みと当事者に対する支援に関する先行研究を整理した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性としては当初計画と概ね変更はないと考えている。目的も目指すところも対面調査や資料収集を中心とした方法も変わらない。しかし、その方法を行うためのツールにおいて工夫が必要である。 今年度の研究の推進方策であるが、2022年2月に2週間にわたってスウェーデンにおいて、ブリガンのスタッフ(専門職)ならびに支援を受けている保護者に対するインタビュー調査を行う予定である。さらに、文字化されたブリガンに関する冊子やチラシなども収集したい。 しかし、COVID-19感染症蔓延状態を踏まえて、渡瑞の前に、現在入手した新聞記事、第三者評価、年次報告等の翻訳をすすめ、随時学会誌などでの発表を進めていく。さらに、ブリガンで使用しているアセスメントに関わる評価表などを入手する努力を行い、それを翻訳して、日本でも実際に子どもに対するアセスメントとして試用できるように精査して日本版を作成する。その一方で、ブリガンの支援を担うスタッフの養成方法についても、英語で会話ができる医師ならびに看護師に対するオンラインと紙面でのインタビュー調査を通して整理していく。 2021年5月から、保育系雑誌に保護者支援についての8回連載が決まっている、一般誌においても、スウェーデンにおける保護者支援の在り方を紹介する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症の蔓延により、海外渡航が難しくなり、スウェーデンにおいて神経発達症群の子どもへの支援に関わる専門職に対する対面調査ができなくなったことが最大の要因である。次年度以降、2022年2月にスウェーデンにおける約2週間にわたる現地調査を予定しているが、日本およびスウェーデンでのCOVID-19感染症の状態と政策的判断を鑑みながら、渡瑞の機会を探りたい。それが難しい場合には、オンラインやメールを介して、ブリガンの活動や専門職の資質能力にかかわるインタビュー調査をすすめ、その一方でインターネットや郵便(書面)を通して、資料の収集を続けたい。
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