本研究の社会的意義は、テクストに物質的形態を与え、書物を構成する諸要素がどのように読者にジャンルを意識させ、読み方を規定しているのか、その機能のあり方を明らかにした点にある。その機能は、人々の期待や不安を掬い取り形象化するという働きを持ったり政治的プロパガンダの側面を前面に出したりという形で具現化している。メディアはしばしば人々が漠然と抱く未来への不安を予言的言説で煽ってきたが、現代においてもより広範な媒体でそれらが展開されている。メディアがどのような形態や文体によって、読者の意識を操作してきたのかを解明することは、現代における「未来記」的言説に対する批判的視座を定めるために有効な手段である。
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