研究課題/領域番号 |
20K00293
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小平 麻衣子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (40292635)
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研究分担者 |
尾崎 名津子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (10770125)
吉田 司雄 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (50296779)
小泉 夏子 (徳永夏子) 日本大学, スポーツ科学部, 講師 (00579112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 『詩とメルヘン』 |
研究実績の概要 |
①2020年8月5日打ち合わせ会議、②2021年3月13日研究会をいずれもオンラインで開催した。①では、今後の活動方針として、『詩とメルヘン』の購入と目次整理、現代女性詩人叢書の購入と整理、研究会における発表分担などを確認した。②では、それに基づき、尾崎名津子、徳永夏子、井原あや、小平麻衣子が、サンリオ出版の主要出版物である『詩とメルヘン』について、特色などの報告を行った。主要な執筆者と時期による変遷、賞の制定、投稿数などが明らかになったが、「メルヘン」の内実は雑誌として規定されておらず、分析が必要であることが確認された。これ以前の動向とのかかわりとして、職場詩やサークル詩の流れを汲む書き手との接点、後続の世代とは、女性詩としての輪郭が明確になる『ラ・メール』との断絶が浮上した。また、『詩とメルヘン』には谷川俊太郎や寺山修司が呼び入れられ、マザーグースや大衆的な歌謡曲にも通ずる平易さが求められていた同時代の詩壇の状況とのかかわりも見て取れる。一方、1980年代になるとイラスト領域での商業的成功があり、掲げられる詩的精神との齟齬が起こることなども明らかになった。 また、SF文庫や、成人女性向け小説、漫画、映画などの各ジャンルの主要な事業について確認し、それぞれが萌芽的な試みを行っていることは見て取れたが、サンリオというブランドの統一的な方針と言えるものがあるのか否かは、今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響により、研究会の開催はオンラインで実施したものの、資料調査や国内出張ができなかった。そのため基礎的な資料収集の段階から滞っている。コロナに伴う本務の増大などにより、各参加者がエフォートを達成できなかったのも研究遅滞の原因である。1年目の本年は、サンリオ出版物のジャンルごとの概要を整理し、2年目に開催する研究会のゲストを選定し、依頼を行うはずであったが、詩の領域について若干の進展を見たものの、他のジャンル、特にSF文庫については分析を行うまでに至らなかった。サンリオ出版の初期は、各ジャンルを担当する編集者の個人的な関心や人脈が大きな方向付けを決定していると考えられるため、そうした方への取材を行い、基礎的な事実関係を確認する必要があるが、有効な絞り込みまで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
資料については、文学館や資料館での閲覧だけでなく、可能な限り購入で補うことを試みているが、次年度以降も引き続き、同様の方針で努力する。オンラインでの研究会の開催は、資料の実物をその場で各自が閲覧することができず、共同的な知見の形成には不利だが、一方で研究メンバー外部や遠方のゲストを招待しやすい利点もあるので、積極的に行い、補っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対策により、国内出張、また海外の協力研究者の招聘はすべて取りやめた。図書館などでの資料調査についても、通常の利便が得られず、利用が少なくなった。対面での業務を伴う大学院生や学部学生のアルバイトも雇用を中止した。以上の理由から、予定していた使用額よりも大幅に少ない金額しか使用できなかった。 使用計画としては、翌年度も出張費が少ないことが予想されるので、研究会にオンラインで招聘するゲストの数を予定より増やし、謝金に充てる。資料収集は、購入を計画より多めに行い、図書館・文学館での複写等についても、郵送サービスの利用など、状況に適した方法に計画以上の予算を充てる。
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