研究課題/領域番号 |
20K00297
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
近藤 健史 日本大学, 通信教育部, 教授 (20195895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 三木露風 / 山崎新聞 / 未公開資料 / 大正15年以降作品 |
研究実績の概要 |
三木露風は、「忘れられた詩人」や「活躍は大正15年までで、この年をもって第一線を退いた」と評され、その後の作品は注目されず近代文学史から忘れられてきた。そこで大正15年以降の未公開作品と資料を整理・公開するとともに、その作品と創作活動を検証し、再評価することが研究の目的であった。 令和2年度は、露風が大正15年以降の作品を寄稿していた『山崎新聞』(兵庫県宍粟市山崎町)を発掘、掲載されている未公開作品(短歌・俳句・随筆・紀行文)を整理・デジタル化した。それに基づき、大正15年11月4日出発の四国巡講の旅における紀行文「四国の旅と自然と」(31回連載)を分析した。また、当時の関連する四国四県の地方紙を収集、『大阪朝日四国版』『香川新報』『愛媛新報』『南海新聞』『南豫時事新聞』などに掲載された露風に関する記事を分析した。 結果的には、これまで明らかにされていなかった四国巡講の旅の行程、地方の新聞記者たちとの交流、講演活動の内容と様子、」インタビューに答えた露風の文学観などについて明確にすることができた。また、地方の新聞記者たちの見た詩人三木露風やその評価を解明した。四国の新聞記者たちの見た露風は、中央詩壇で活躍する人であり、神秘的なトラピスト修道院で修行した宗教詩人である。さらに、現代文芸傾向を短評する象徴主義詩人として見ていた。さらにまた、露風がカトリックの布教のためだけでなく、地方の文学・文化の向上に関心をいだいての巡講の旅であったという。このことは露風の講演の多くが「宗教と文学」という演題であることが示唆している。なお、東京都三鷹市所蔵の『三木露風資料目録』と『山崎新聞』と関連する自筆メモ(揮毫した短歌)の新資料を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの流行の影響により、現地調査が不可能な状況にあったことによる。主な調査は、兵庫県たつの市霞城館と宍粟市教育委員会文化財課に2度ほど訪問し、三木露風と『山崎新聞』に関連する資料の調査、蒐集、専門業者同行によるデジタル撮影を行う予定であった。霞城館においては、『山崎新聞』に寄稿した自筆原稿、20冊にも及ぶ自筆創作ノート・日記、書簡、写真などの資料を整理・デジタル化し、『山崎新聞』との関連性を検討する予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、新型コロナ流行の状況を見据え、現地調査をして資料の収集をする。終息が遅れる場合は、複写申請などの方法による対応を考えている。また、状況にもよるが宍粟市においては、ワークショップ「文学の郷 山崎―三木露風と『山崎新聞』―」(仮題)の開催を計画している。さらに、この間に蒐集した資料等により「三木露風と『山崎新聞』関連作品・資料目録」を作成する予定である。 令和4年度は、たつの市霞城館において「「三木露風の未公開作品と資料」をテーマとしたシンポジウムの開催を計画している。また、研究成果の報告として『三木露風研究―新資料「山崎新聞」と作品―』(仮題)の出版を予定している。その科研費出版助成の申請は、令和3年度に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、新型コロナの流行の影響で、現地調査が不可能な状況であった。令和3年度は、状況を見据えて現地調査等を計画している。
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