研究課題/領域番号 |
20K00297
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
近藤 健史 日本大学, 通信教育部, 研究員 (20195895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 三木露風 / 宮沢賢治 / 新資料 / 山崎新聞 / トラピスト修道院 |
研究実績の概要 |
研究の実績は、大きく3点である。第一に、三木露風が寄稿していた『山崎新聞』に関する新資料の蒐集と整理を終え、すべての作品をジャンル別に分類したデジタルアーカイブが完了した。資料調査は、兵庫県たつの市霞城館、宍粟市教育委員会社会教育文化財課、東京都三鷹市スポーツと文化部芸術文化課が所蔵する資料を対象に行った。その結果、『山崎新聞』に掲載されている露風作品に関連する未公開資料の草稿や作品、自筆創作ノート、日記、書簡などを発見することができた。これらの新資料を「三木露風の『山崎新聞』全作品・関連資料」として整理しており、公開の方法を検討中である。 第二に、新資料の分析を通して、三木露風と宮沢賢治との交流を示す新資料「宮沢賢治宛て書簡控え」や新資料随筆「トラピストのクリスマス」を発見して新聞等に発表し、三木露風の新たなアプローチでの研究を促した。今まで知られていなかった三木露風と宮沢賢治との文学的交流関係と、トラピスト修道院時代に作詞した「赤とんぼ」の詩想に関わる修道院周辺の子どもたちとの交流を示す貴重な資料である。 第三に、新資料に基づいた研究成果を論文として発表した。その一つは、露風と賢治の交流を初めて指摘した論である。賢治が露風に『春と修羅』を献本した理由、露風が賢治に送った礼状の内容、露風の『春と修羅』序文の理解、二人の詩にいくつかの共通性が存在することから、文学的交流には宗教詩人としての深い精神性の共鳴があったことなどを論じた。もう一つは、「三木露風研究の現状と問題点」についての論である。三木露風の研究史において初めて、露風研究の多量な研究文献を整理し、歴史的展望や問題史的な意味づけを考えた試みである。 以上の3点は、単に新資料の公開だけでなく、三木露風の再評価のための文学的価値と学術的価値がある。また停滞している三木露風研究に新たな視点での研究を提起するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの流行により、地方出張が制限されたことから現地調査等の研究計画が十分遂行できない状況が続いている。 第一の目的である『山崎新聞』に関する霞城館や三鷹市所蔵の資料調査・デジタル化については、完了した。しかし、両市に所蔵されている露風に関する膨大な資料については、『三木露風所蔵目録』を基にしての許可申請、閲覧、調査と緊急事態宣言等の行動規制の関わりから時間が必要であった。また、『山崎新聞』発行の地である宍粟市山崎において計画していたワークショップ「文学の郷 山崎―三木露風と『山崎新聞』―」(仮題)もまん延防止等重点措置等により結局のところ次年度以降に変更せざるを得なかった。さらに、予定していた「三木露風と『山崎新聞』作品・関係資料目録」の霞城館ホームページにおける公開は、令和3年4月よりたつの市に移管され手続き等の理由もあり遅延した。掲載について変更し、次年度に本研究公開用ホームページ「三木露風研究会ホームページ」に掲載・公開予定である。 第二の目的である露風の資料を所蔵しているたつの市や宍粟市、ゆかりの北海道北斗市との情報収集と意見交換を実施した。たつの市においては「露風から宮沢賢治に宛てた書簡(控)」を公開特別展、「赤とんぼ100年記念ワークショップ」に参加、露風の子息三木豊晴氏との意見交換をした。宍粟市山崎では、市立図書館等での現地調査や郷土研究家や住職など地元協力者との意見交換を行った。北杜市では、北斗し観光協会主催のワークショップのパネリストとしてオンラインで参加し発表した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は新型コロナ流行の状況を見据えて研究と成果を公表する。 まず、残された資料の調査研究を遂行する。終息が遅れる場合は、複写依頼などによる資料蒐集などの方策を検討している。 また、資料の分析を基に、調査の協力地である露風の生地「たつの市」と『山崎新聞』の発行地「宍粟市山崎」において研究成果の報告を兼ねた会を実施する。宍粟市におけるワークショップについては、『山崎新聞』の特徴、掲載された露風作品と新資料、三木露風作品の読者層の文学的風土を築いた安田青風と山崎女学校などをテーマとする予定である。たつの市におけるシンポジウムについては、「霞城館」所蔵の新資料に基づいた新しいアプローチをテーマとする予定である。地元の関係団体の協力も得て開催の実施に努めたい。 さらに研究成果については、論文発表やホームページなど、何らかの形で報告することを計画中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度もコロナの流行の影響で、現地調査が3回の予定だったが1回だけであった。令和4年度は、改めて現地調査を計画している。 また、たつの市においてのシンポジウムの開催も予定している。
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備考 |
三木露風と生前の宮沢賢治との交流を示す新資料(露風の賢治宛書簡控え)を発見「神戸新聞」2021年8月23日朝刊第1面 三木露風のトラピスト修道院時代の交流を示す未発表随筆を発見「北海道新聞」2021年11月30日夕刊第17面 北海道北斗市観光協会主催「赤とんぼ勉強会(応用編)」で講演(オンライン)2022年3月23日
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