研究課題/領域番号 |
20K00301
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
葉名尻 竜一 立正大学, 文学部, 教授 (00713075)
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研究分担者 |
堀江 秀史 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (10827504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | さっぽろ寺山修司資料館 / 山形健次郎 / 俳句同人誌『牧羊神』 / 三沢市寺山修司記念館 / 地域文化 / 中野トク / 岸上大作 |
研究実績の概要 |
2021年度は、さっぽろ寺山修司資料館の代表である山形健次郎氏のインタビュー動画を撮影し、その一部を映像資料として公開することができた。インタビュー動画の撮影は既に終了しているので、編集作業を進めながら順次公開していく予定である。山形健次郎氏は寺山修司が高校生のときに立ち上げた俳句同人誌『牧羊神』の同人の一人である。 このインタビューのおかげで不確かだった寺山修司の年譜の一部を補完することができただけでなく、寺山修司とともに俳句活動をしていた同時代人の貴重なインタビュー映像を資料としても残すことができた。 また、研究分担者の堀江秀史が韓国の仁川大学校人文大学日本文化研究所国際共同融合フォーラム「変動する地域、横断する地域文化」において、「寺山修司と地方記念館を中心に」と題してこの研究の概括と意義とを報告できたことも大きな成果である。研究協力者で青森在住の久慈きみ代は地の利を活かして三沢市寺山修司記念館所蔵の『演出ノート エッセン 69年10月』を独自に調査し「毛皮のマリー」を考察した。この調査によって寺山修司が早い段階で抱えていた問題意識を再認識することができた。 さらに、メンバーが個人で進めていた研究との相乗効果もあった。研究とは単線で進むわけではないことを実感する。研究協力者の小菅麻起子は『中野トク小伝 寺山修司と青森・三沢』(幻戯書房)を2022年4月に刊行するが、山形健次郎氏へのインタビューによって、寺山修司の奈良訪問の詳細を記すことができた。研究代表者の葉名尻竜一は寺山修司第一歌集『空には本』の発刊状況を確認し、岸上大作旧蔵の同資料の再考につなげた。同資料は姫路文学館で開催された岸上大作の企画展でも展示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年間スケジュールを振り返りながら作業過程を記すことで進捗状況を報告していく。 3月に研究代表者の葉名尻と研究協力者の久慈がさっぽろ寺山修司資料館を訪問し、一次資料の調査にあたる。資料館には2003年4月から世田谷文学館で開催された「没後20年 寺山修司の青春時代展」で初公開された資料群をはじめ、主要な資料の一部が展示されているものの、同人同士で交わされた未公開のハガキや書簡等がまだ多数保存されていることがわかる。5月に上京した山形健次郎氏を葉名尻と研究分担者の堀江が訪問し、インタビュー動画を撮影する許可を正式に得る。その後、6月、7月とオンライン会議を重ねてインタビューのための構成台本を作成する。9月にさっぽろ寺山修司資料館でインタビュー動画を撮影することになるが、葉名尻と堀江は現地で撮影の準備をし、研究協力者の久慈と小菅は同時双方型のオンラインで質疑応答に参加する。3日間にわたるインタビューはこのような作業を経て無事に収録できた。 2022年1月に堀江が韓国の仁川大学校にてオンライン開催された国際学術大会で研究発表をし、共同研究者全員で参加する。同年3月に静岡の堀江研究室で編集の方向性を再確認したあと、同月末に最初の1本をYouTubeで一般公開するに至る。現時点の計画では、インタビュー動画は計4本の構成になる。編集作業に労力を要するため、公開までに時間がかかる。次の公開は8月頃を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況にも記したが、山形健次郎氏のインタビュー動画は4本の映像資料として公開していく予定である。最初の1本である「寺山修司と山形健次郎 『牧羊神』同人山形健次郎インタビュー1 生い立ちと高校生の頃」は一般公開され、インターネットの検索マシンでも検索可能である。今後は、国際寺山修司学会の公式HPでも視聴できるようにしていく。 YouTube による一般公開は誰もが視聴可能であるが、この映像資料のことを既に知っている者でなければ検索をかけない点に問題がある。しかし、国際寺山修司学会のHP上で公開することができれば、「寺山修司」に関心のある研究者や一般の方々がこの映像資料に気付きやすくなる。この映像資料を、届けるべき人に届けられる利点がある。 また、資料館代表の山形健次郎氏より、5月4日の寺山修司の命日にあわせてさっぽろ寺山修司資料館を財団法人化したとのお知らせを頂戴した。今後、所蔵された書簡やポスター類を順次デジタル化し公開していく計画のようである。今回制作したインタビュー動画は山形健次郎氏の活動の趣旨にも合致するため、さっぽろ寺山修司資料館のHPでの公開もお願いすることになった。 現在、同様のインタビュー動画をもう一つ制作する企画があるが、まだ準備段階で実現は不透明である。山形健次郎氏の時もそうであったが、インタビューのための構成台本を作成するためには一次資料による裏付けが重要になってくる。三沢市寺山修司記念館の所蔵資料の調査だけでなく、さっぽろ寺山修司資料館所蔵の資料も随時調査を進めていく。三沢市寺山修司記念館所蔵の資料としては寺山修司の手帖の翻刻が進みつつある。さらに2023年度に開催予定のアメリカでの国際寺山修司学会にあわせて研究期間延長の申請をし、研究成果を報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年の秋に国際寺山修司学会をアメリカで開催する予定だったが、新型コロナの感染状況を鑑みて中止せざるを得なくなった。研究期間延長の申請と同時に、2023年にアメリカで国際寺山修司学会が開催できるように準備を進めている。アメリカで開催予定の国際寺山修司学会において共同で研究報告をするために、全体の研究スケジュールを組み直したから。
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備考 |
「寺山修司と山形健次郎 『牧羊神』同人山形健次郎インタビュー1 生い立ちと高校生の頃」は、YouTube(一般)とさっぽろ寺山修司資料館HPで公開。このあと、国際寺山修司学会HPでも公開予定である。
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