本研究では1945年9月から1954年12月までの原書と翻訳絵本の比較検討を通して、絵本翻訳における異文化受容の様相を歴史的に検証し、戦後絵本史の出発点となった翻訳絵本の実態を解明した。 戦後占領期の絵本翻訳はGHQ/SCAPによる検閲の影響を強く受け、翻訳斡旋である入札制度、特殊な翻訳権の取り扱いのもとで実質的に統制されていたことが明らかになった。統制の延長線上ではあったが、これらの海外絵本は〈岩波の子どもの本〉絵本シリーズ(1953年12月~54年12月)の出版に代表されるように、自由で未来への可能性に満ちた新しい子ども像をもたらし、日本絵本史における現代絵本の萌芽期を形成した。
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