最終年度は、富山市立図書館山田文庫所蔵の富山藩士が行った連歌百韻四巻を、インターネット上に公開されたものを調査し、翻刻した。筑波大学が所蔵する京都・北野天満宮旧蔵の連歌百韻三十巻を、原本調査し、翻刻した。また国会図書館が所蔵する筑波山の連歌を紙焼き写真で調査し、百韻二十巻を翻刻した。石川県小松市にある小松天満宮所蔵の百韻連歌を原本調査し、百韻十巻を翻刻した。連歌で用いられる言葉が、去り嫌いや一座三句ものといった連歌式目とどのようにかかわるかを明らかにするために、あいうえお順の連歌式目辞典を作成し、各語で検索できるようにした。富山藩士の連歌、北野天満宮の連歌、筑波山の連歌、小松天満宮の連歌、それに先に翻刻した仙台藩伊達家の連歌を加え、それぞれの用語を比較し、連歌式目辞典を用いて式目を比較してみたところ、用語においては、富山藩士の連歌、筑波山の連歌に、中世連歌には用いられない表現があることがわかった。式目においては大差なかった。 徳川幕府が毎年年頭に行っており、全国的に模範とされることが多かった、いわゆる「御城連歌」を13年間分(百韻十三巻)を、いったん翻刻し、それをすべてひらがなにあらため、エクセルを用いて各句を入力し、同じ句が用いられるかを調査し、連歌表現について分析した。単語単位では同じものが何度も使われるが、同じ表現が句単位では用いられていないことが明らかになった。 研究期間全体として、百韻百巻ほどを翻刻し、全体的には保守的ではあるが、中には革新的な表現をなすものもあったことがわかった。また用語検索システムの作成方法に知見を得ることができた。 なお全文検索システム「かぐや」のマニュアル、「御城連歌」百韻十三巻をエクセルに入れたもの、連歌式目辞典、以上3点については『近世連歌の総合研究成果報告』として印刷製本して、連歌研究者に配布した。
|