本研究課題では『三国志演義』が室町期に日本に入ってきた可能性について、これまで取り組んできた「日本における三国志享受の通史的把握」の観点から考察した。日本での三国志享受において重要な役割を果たしたのが室町期の学問で、中国史書や儒学への学びが積極的になされたことで、魏蜀の正統論や、理想的臣下の象徴としての諸葛孔明が注目されるようになり、それが南北朝時代との重ね合わせを生んだ。同時に、室町期の学問では日本紀注釈も大きな位置を占めており、そこで取り上げられる神功皇后の三韓征伐が三国時代に当たることから、この2つの時代が関連付けて解釈された可能性が高いことから、両者の接点について、検討を行った。
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