研究課題/領域番号 |
20K00322
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
服部 訓和 日本大学, 商学部, 准教授 (40612784)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Knopf / 三島由紀夫 / サイデンステッカー / 大江健三郎 / Grove Press |
研究実績の概要 |
日本文学作品のアメリカへの翻訳出版を担っていたのはKnopf社であり、川端康成、三島由紀夫、安部公房らの翻訳は同社から刊行されている。大江健三郎は当初はKnopfのハロルド・シュトラウスを三島に紹介され、同社からの出版を予定していたが、三島の翻訳者だったジョン・ネイスンとともに新興のGrove Pressへと版元を鞍替えする。こうした経緯は単なる出版裏話に留まるものではなく、当時の日米における微妙な文化的な力学を反映したものであり、世界文学化していく日本近代文学のあり方を再検討するための有効な補助線と捉えることができる。 Knopf社の翻訳対象として選ばれた作品の選定には、翻訳者エドワード・サイデンステッカーによるところが大きいことが知られている。ただしKnopf社関係資料を調査すると、そもそも三島への関心の背景には文化冷戦を闘うアメリカ国務省の意向が存在していたことが分かった。またサイデンステッカーの川端への眼差しからは、既成のアメリカを問い直す視座として別様の近代をなしとげていた日本を必要とした、彼の政治的思想的な立場とコンテクストを読み取ることできる。一方で、戦後世代に属する大江およびその翻訳者ネイスンの場合は、上記のコンテクストの延長線上に仕事を進めながらも、東洋と西洋といった図式にとらわれず、より世界的・普遍的な問題としての近代の問題を焦点化しようとしており、その結果、カウンターカルチャーにも近しかったGrove Pressからの出版を選んだのではないかと考えられる。 以上のような見取り図は、両者資料の予備的な調査および国内文献の検討に基づくものである。今年度は本格的な渡米調査が実行できなかったため、調査が可能となった時点で更に調査と検討を加える必要がある。 また、上記の検討を行いつつ、安岡章太郎、寺山修司等、同時期の作家の作品についても幅広く検討を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心的な課題は、冷戦期に日本近代文学作品を多く出版したアメリカの出版社に関連する資料を所蔵するアーカイブへの調査にある。だが、研究開始年度にあたる令和2年度は世界的なパンデミックにより海外渡航が困難となった結果、米国への渡航自体が困難となり、研究調査のための渡米は実行できなかった。渡米による調査は令和3年度以降に先送りせざるをえなくなったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航を伴う調査研究は令和3年度においても実施可能かどうかは不透明な状況である。したがって、調査済みの資料や国内で入手可能な資料を用いて予め検討を進めつつ、令和3年度ないし令和4年度において集中的に渡米調査を行う予定である。また、令和3年度にも渡米が不可能であった場合にも、令和2年度までの既収集資料を用いて成果を公開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる渡航制限のため、旅費を執行できなった。次年度の旅費として繰り越すとともに、一部を物品費・複写費用に充てる予定である。
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