本研究は、近世後期の江戸・京・大坂のいわゆる三都の公許の芝居小屋に所属している歌舞伎役者の東海地域における芝居興行について調査、究明をするものである。現在、日本文化史研究において、歌舞伎役者の地方興行については、十分な進展をみせているとは必ずしも言えない状況である。したがって、事例を積み重ねることによって、この課題を少しでも克服しようとする狙いもある。 本年度は、京都市歴史資料館、京都府立京都学・歴彩館、静岡県磐田市歴史文書館、磐田市竜洋郷土資料館、見付天神、珠玉山宣光寺、島田市博物館などを訪れ、江戸と上方の歌舞伎役者による静岡地域を中心とする芝居興行の実態を捉えるべく、それに関する史資料を調査、収集した。そして、昨年度までに調査収集してきた東海地域における歌舞伎役者の芝居興行に関する史資料と合わせて検討した。成果として、駿河国見附宿にて開催された芝居興行について捉えることができた。 また、本年度は、オンラインによる学会報告を2件行った。まず、「第18回 デジタルアーカイブ研究会」にて、「『根本丸本出入帳』にみる地域アーカイブ ―信州川路地域を中心として―」と題する報告(2022年6月12日)を、続いて「デジタルアーカイブ学会 第 2回 DAフォーラム」にて、「歌舞伎台帳『魁源平躑躅』とコミュニティアーカイブ」と題する報告(2022年6月26日)を行った。今後、報告で得た指摘を踏まえ、論文としての成果を発表する予定である。 加えて、本年度は、歌舞伎の歴史や基礎知識について、タイ国立チェンマイ大学人文学部日本研究センター オンライン学術講演会にて「歌舞伎に親しむ」と題する講演(2023年2月11日)を行うなど、私自身の研究について、国際的な発信をする機会を得た。
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