江戸時代、三都(江戸・京・大坂)の芝居小屋に所属している歌舞伎役者の地方興行研究については、必ずしも進展を見せている状況とは言えない。本研究は、各地域の諸機関所蔵の史資料、例えば「芝居番付」をはじめとする興行記録及び人々の評判などを分析して、地域に残存している史資料を基に歴史学的視点から地方興行を捉えようとした点に学術的意義が認められる。 さらに、これまで十分な成果があるとは言えない歌舞伎役者と地域の人々との結びつきなどの実態について一歩ずつ解明が進められ、東海地域における人々の歌舞伎享受の一端を提示できたという点に社会的意義もある。
|