研究課題/領域番号 |
20K00326
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山田 和人 同志社大学, 文学部, 教授 (60191300)
|
研究分担者 |
加藤 弓枝 鶴見大学, 文学部, 教授 (10413783)
三宅 宏幸 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90636086)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 国語科教育 / 古典教育 / 古典教材 / 和本 / くずし字 / 和本バンク |
研究実績の概要 |
本研究は児童・生徒の古典への興味関心を喚起し、それを継続させることができる、国語教育の現場に則した古典教材を通して、新しい古典教育の方法論を実践的に構築し、その取り組みを広めることを目的とする。そのため、①古典教材開発研究センターの設立と運営、②くずし字や和本を用いた新しい古典教材の開発と実践、③教材プラットフォームの構築と運営、④新しい古典の魅力へと誘う古典教材に関する出版物の刊行、に取り組んでいる。 2020年度は情報発信のために公式facebookやWEBサイトを開設したが、2021年度は公式Twitterを開始し、広報の強化に努めた。2021年9月には第3回「古典教材の未来を切り拓く!研究会」(通称「コテキリの会」)を開催し、仲島ひとみ氏(国際基督教大学高等学校)による基調講演、センター員による古典籍データベースの使い方のレクチャー、意見交換会「古典をトモダチにするには?」を実施した。 また、2022年3月には第2回古典教材開発研究センターの研究集会「古典籍×教材性――和本・くずし字が教材!?」(第4回コテキリの会)を開催した。佐々木孝浩氏(慶應義塾大学斯道文庫)による基調講演、コテキリの会の活動報告、4名の教員・研究者・学芸員をパネリストとして古典籍の教材性について討議し、参加者と登壇者との意見交流会を行った。 さらに、研究代表者の山田和人はセンターの取組やその活動意義を学会等で積極的に発表した。2021年6月には日本近世文学会公開シンポジウムにパネリストとして登壇し、11月には国文学研究資料館主催の第7回日本語の歴史的典籍国際研究集会で口頭発表を行った。 その他、2021年度は同志社大学プロジェクト科目で、新しい発想のくずし字教材を開発し、履修学生自らが小学校や中学校で特別授業を実施した。また、分担研究者の三宅宏幸が高等学校で浮世絵とくずし字を活用した特別授業を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画していた研究内容を順調に遂行できた。年2回開催しているオンライン研究会には、毎回定員を超える参加申込があり、徐々にセンターの取り組みが広がっている実感を得ている。また、2021年度の特筆すべき実績としては、研究者や教育者などから寄贈された和本を、小学校・中学校・高等学校・高等専門学校などへ無償で貸し出す、「和本バンク」と称するプロジェクトを試行的に開始したことが挙げられる。3月には「和本バンク」の和本を使用した特別授業を、研究協力者の加藤直志が所属する名古屋大学教育学部附属高校の協力を得て、研究分担者である加藤弓枝・三宅宏幸がオンラインで実施した。 とくに「和本バンク」開始の反響は小さくなく、複数の問合せがセンターへ寄せられ、その中には実際に和本貸出へと繋がった連絡も含まれていた。持続可能な貸出システムを構築することが課題ではあるものの、順調な滑り出しと言えよう。よって上記の進捗と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画通り、年2回の研究会・研究集会を開催する。9月にはケンブリッジ大学のラウラ・モレッティ氏を講師として迎え、海外と日本におけるくずし字・和本教育に関する研究会を開催し、翌年3月には最終年度に相応しく、総決算と位置づけられる研究集会を同志社大学で実施する予定である(感染状況により遠隔開催)。 また、2023年春にはモジュール教材集としても活用可能な、和本やくずし字を用いた新しい古典教材に関する書籍を刊行する。書籍には過去の研究会・研究集会の基調講演者による論考のほか、くずし字や和本を用いた実践報告や、くずし字を用いた教材プリント等を掲載する。本書の目的はくずし字や和本をきっかけに、古典に興味を持つ児童・生徒を増やすことにある。 さらに、引き続き新しい教材の開発・実践を、名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校、同志社大学プロジェクト科目の履修生、協力校の助力を得て継続する。2022年度も同志社大学では、学生が新しい古典教材開発に挑戦するプロジェクト科目が開講される。同科目の成果発表も本科研の研究集会で予定している。この取り組みには、古典の意義を理解し、それを未来や世界へ繋げられる若い文化継承者を育成する効果があると考えられる。 本科研の課題と考えられる、「教材プラットフォーム(web版)の構築と運営」については、2022年度中に構築予定で協議を重ねている。教材プラットフォームには、少なくとも今後10年は活用可能な方法での構築を模索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
採択金額が申請金額より減額となったため、研究計画に記した出版費用が確保できなくなった。よって、毎年旅費等で計上している予算を最終年度の出版費に回すこととした。それゆえ次年度使用が生じた。
|