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2023 年度 実施状況報告書

『体操詩集』を中心とした村野四郎に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00332
研究機関崇城大学

研究代表者

岩本 晃代  崇城大学, 総合教育センター, 教授 (20209406)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード村野四郎 / 『体操詩集』 / 修身教育 / 体操教育 / 抵抗詩 / モダニズム
研究実績の概要

延長し4年目に当たる令和5年度は、戦前期の村野四郎関連の詩作品をデータベース化する作業に取り組んだ。その成果として、第一詩集『罠』(1926年)前後の時期の作品年譜を作成した。これには『定本村野四郎全詩集』(筑摩書房)に収録されていない作品も多く含まれており、また、単行詩集収録詩との照合も行っていることから、今後の村野四郎の書誌を作成するうえで基礎的資料としての意義があると思われる。また、この作品年譜は「村野四郎初期作品資料―『体操詩集』前後の俳句を中心に―」(「崇城大学紀要」第47巻、2022年)と合わせることで、村野四郎が俳句から詩作へと移り行く過程が明らかになり、本研究課題である「『体操詩集』を中心とした村野四郎に関する実証的研究」において、『体操詩集』に至るまでの方法意識の変容を実証的に論じるための基盤となった。
さらに資料をもとに、『体操詩集』に続いて刊行予定だったものの未完となった『近代修身』に係る詩群との関連から同詩集を検証し、本研究の主眼である『体操詩集』についての作品論をまとめることができた。この論は『体操詩集』の最後の詩「肋木」が原題「近代修身」であったことを踏まえ、「近代修身」という詩語の成立について、戦前の体操教育史、修身教育史をもとに再検討し、彼が文教政策に強く影響を受けた教科「体操」と「修身」を詩のテーマとし、「近代修身」という独自の詩語によって、戦争への抵抗を試みた異色のモダニストであったことを論証したものである。これまで『体操詩集』は、新即物主義の方法によって肉体の形態美を客観的に表現したモダニズムの代表的詩集として評価されてきたが、その従来の評価に加え、抵抗詩が含まれた詩集として、新たな評価を与えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

収集した作品資料のうち219篇を、作品年譜としてまとめ、活字化することができたため。収録詩篇は、1922年から1930年までに文学雑誌等に発表された作品群で、『体操詩集』までの詩の変容過程を分析するうえでも重要な時期の作品資料である。
また、資料をもとに、『体操詩集』を新たな視座から評価し、作品論としてまとめることができたため。本研究の課題「『体操詩集』を中心とした村野四郎に関する実証的研究」の中核となる作品論であり、文学と教育学の学際的研究としても意義あるものと思われる。

今後の研究の推進方策

これまで収集し、作品資料年譜として活字化した俳句及び詩作品の他にも村野四郎作品は多く存在すると推察される。今後、詩論やエッセイ等をも含めて、さらに補遺に努め、作品論の論拠となるような充実した資料集の作成を目指すこととする。この基礎的研究が日本のモダニズム詩研究の一助となるよう努めたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナの影響で遅れていた調査が当該年度までには追い付かず、調査研究のための旅費の支出が計画通りにいかなかったため。今後、国立国会図書館をはじめ関係の図書館等において作品収集を主な目的とした調査研究を行い、本研究最終年度までに戦前における村野四郎の作品資料年譜の完成を目指すこととしたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] 村野四郎初期作品資料―第一詩集『罠』前後の詩を中心に―2024

    • 著者名/発表者名
      岩本晃代
    • 雑誌名

      崇城大学紀要

      巻: 49 ページ: 154-170

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 村野四郎『体操詩集』論―詩「肋木」と「近代修身」連作詩との関連から―2023

    • 著者名/発表者名
      岩本晃代
    • 雑誌名

      日本近代文学

      巻: 109 ページ: 49-64

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2024-12-25  

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