本研究では、「出雲国造神賀詞」奏上儀における神宝献上の背景に、物部氏の〈鎮魂〉観があることを明らかにした。これは、旧来内在魂の揺動や遊離魂の付着といった観点で説かれてきた古代の〈鎮魂〉観自体の再考を促すものであり、「神賀詞」詞章解釈の重要な前提となることはもちろん、多くの上代文献について新たな〈読み〉の可能性を広げる意義をも有するものと認識している。 また、「神賀詞」固有の神話的言説である四神鎮座記事の検討を通し、物部氏・出雲氏の媒としての日置氏の存在を確認できたことは、古代の氏族関係に新たな光を照射することにつながると考える。
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