研究課題/領域番号 |
20K00334
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80360056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 羇旅漫録 / 曲亭馬琴 / 地誌 |
研究実績の概要 |
当該年度は、曲亭馬琴『羇旅漫録』について、テキストの文献学的な研究、註釈、ならびにフィールドワークによる調査を行った。テキストについては、東京大学附属図書館南葵文庫本(半紙本二巻三冊)、天理図書館西荘文庫本(半紙本二巻一冊)、石水博物館千歳文庫本(大本二巻一冊)、奈良女子大学学術情報センター本(半紙本二巻二冊)の四本の本文批評を通し、奈良女子大学本が馬琴の最終稿本に近い写本であることをつきとめた。その際、資料の書誌的な調査に加え、馬琴と小津桂窓との書簡のやりとりに手がかりを見出した。 また、註釈に関しては、地名・人名・書名などの固有名詞についてはできるかぎり付し、加えて馬琴自身が残した周辺資料についても関連するものは参照事項として掲げた。具体的にはこの旅における訪問先の情報を含む『瀧澤家訪問往来人名簿』、旅行直後に刊行された黄表紙作品、享和三年末自選の狂文集『醴(あまざけ)新書』・後年の文政七年(一八二四)に自作の狂歌・発句など選定した『自撰自集雑稿』への掲載状況、本書の内容をめぐり小津桂窓とやりとりした書簡内容、「購得目録」、『曲亭蔵書目録』などとの照合を記した。 フィールドワークについては、津島、名古屋、吉田などの現愛知県と滋賀方面に赴き、実地踏査を行うとともに、水害の記録を裏付けるために地形の写真なども撮影した。 これらを成果物としてまとめるべく準備した。 さらに、これと並行して『羇旅漫録』の異本群である「馬琴西遊記」本の調査も行い、おおよその諸本関係を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
曲亭馬琴『羇旅漫録』の校註作業は予定していた通りの進行である。また、それとともに『羇旅漫録』の異本群である「馬琴西遊記」本の調査も行い、全体として計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、『羇旅漫録』校註本の刊行、ならびに異本群についての学会発表を予定している。また、18世紀の奇談史についての書も執筆予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響が大きく、とりわけ予定していたフィールドワークや文献調査などを縮小する必要に迫られたため。
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