研究課題/領域番号 |
20K00337
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 華子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10609605)
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研究分担者 |
山本 聡美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00366999)
堀川 貴司 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (20229230)
渡邉 裕美子 立正大学, 文学部, 教授 (30713078)
陣野 英則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40339627)
山中 玲子 法政大学, 能楽研究所, 教授 (60240058)
梅沢 恵 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 主任学芸員 (60415966)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本文学 / 美術史学 / 中世 / 中国 / 日本文化史 |
研究実績の概要 |
2021年度は、前年度に引き続いて新型コロナウィルス感染症(covid-19)の大きな影響を受け、参会しての研究会はもとより、共同調査や踏査を行うことは不可能となった。しかし、web会議システムを用いて計4回の定例研究会を行うことで研究の進展をはかることができたと考えている。 定例研究会の日程・発表者・内容は以下の通りである。①山本聡美「教説と廃墟(3)──罪業の証としての病、滅罪の場としての廃墟」(2021年6月20日)、②梅沢恵「一遍聖絵」巻三第二段[三輩九品の道場]─中世の祇園精舎観を手がかりとして─」(2021年9月7日)、③山中玲子「能《半蔀》を読み直す―シテはどんな場所にいるのか―」(2021年12月27日)、④堀川貴司「五山文学の題材―廃墟論の前提として―」(2022年3月18日)。 これらの研究会の発表と質疑によって明らかにされたのは、各ジャンル(仏典・説話・中世絵画・謡曲・漢詩文)における廃墟の表象のあり方と象徴性、文化史的位置付けである。本研究が掲げた問題意識のうち、(1)「日本の古代・中世の文学・美術・芸能において、廃墟はいかに表象され、また、その表象はいかに変容していくのか」、(2)「古代・中世における廃墟の表象は、当時の政情や時代思潮・宗教思想と、どのように切り結ぶのか」、(3)「東アジアの廃墟という視点から、日本の廃墟はどのように定位できるのか」という3つについては、学術的な共通理解を醸成し、学問的枠組を共有する段階に至りつつあると考える。 また、研究成果の公開としては、2020~21年度に開催した研究発表から、山中「能《半蔀》のワキ」(2021年)、渡邉「彷徨する寂蓮ー寿永百首家集『寂蓮集』雑歌をめぐってー」(2022年)、木下「『東関紀行』における旅の造型」(2022年)などが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度同様、社会状況を鑑みて、共同調査や展覧会の企画等、参集することが前提となる研究方法については猶予せざるを得なくなったが、年3回を予定していた定例研究会を4回に増やす等、代替措置を講じた。このことによって、研究の活発な進展を見ることができたと考える。また、共同研究の成果として論文11本他を公表することができた。以上の理由により、研究の進捗状況としてはおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症(covid-19)については、ワクチン接種の拡がり等のおかげで、現在一定の落ち着きを見せている。ただし、全国的に見た場合、まだ予断を許さない状況にあると考えられるため、本年度も文献・絵画資料調査や現地巡見を含む共同調査を実現できる可能性は決して高くはない。 しかし、web会議システムを用いた研究会やシンポジウムの開催は無理なく行える状況にあること、美術館・博物館等の展覧会も(制限はありながらも)開催できる環境が整ってきたことなど、今後の研究を進める上での社会状況は十分に明るい。これらのことを踏まえ、本年度は研究会における個々の研究の推進をはかるとともに、最終年度として共同研究による成果をとりまとめ、公開をはかるための研究集会の開催、書籍の刊行や展覧会の開催企画等を進めるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症(covid-19)の影響により、予定していた出張が不可能となったため、研究費の一部を次年度に繰り越して使用する。
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