研究課題/領域番号 |
20K00340
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大井田 晴彦 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (70313179)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大和物語 / 歌物語 / 勅撰集 / 私家集 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)『大和物語注釈』作成(2)『大和物語事典』作成の二つを大きな柱としている。この二つの柱は、深く結びついており、注釈作業を進めつつ、事典作成も並行して実施してゆく。まず(1)は、整定にはじまり、語句の詳細な注解、他出資料との比較、わかりやすい口語訳、そして各章段の本質をとらえた鑑賞・批評を備えた新しい注釈をめざしている。(2)は、『大和物語』に関する重要事項・情報を収集・整理し、研究の便宜をはかる事典作成である。具体的には、①諸本についての書誌、②注釈史・研究史、③作中人物総覧、④和歌総覧、⑤享受と影響、⑥全自立語・重要語辞典、⑦話型・モチーフ総覧、をその内容とする。本年度は、初年度ということで、初段から少しづつ注釈作業を進めた。また、前年度まで科研費の交付を受けて進めていた『伊勢物語』に関連する研究も、歌物語研究の一環として行い、論文「伊勢物語の「翁」と「みやび」」を発表した。主人公が「翁」と称される、いわゆる翁章段を、和歌と政治権勢のかかわり、ひいては「みやび」の観点から論じたものである。二条后と「翁」となった主人公の悲恋を語る『伊勢』七十六段は、類似の話が『大和物語』百六十一段に見られるが、『大和』では「在中将」とあり、相違点も少なくない。『伊勢』と『大和』の性格を比較した。また、王朝文学全般に関するものとして、学会発表「王朝文学における病」を行った。平安時代もまた現代と同様に疫病が猛威を振るった時代であったが、この時代の文学と疫病のかかわりを、『枕草子』や『源氏物語』などを通じて考察したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスの影響により、大学での研究・教育に大きな支障が生じた。遠隔授業の準備などに多大の時間と労力を割かれた。そのため、当初の計画よりはやや遅れ気味であるが、研究のペースを上げて遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き『大和物語』の注釈作業を進め、また、並行して重要事項を精査、整理して事典作成の基礎作業とする。学会・研究会などで『大和物語』および平安朝和歌・物語に関する研究発表を行うことで、現段階における成果を広く発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により、調査・学会への参加などの旅費を使用する予定がなくなった。また、研究に必要な機器類や書籍の購入を見合わせてたものも少なくなく、次年度使用額が生じた。
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