『大和物語』は、平安時代の代表的な歌物語の一つであり、当時の貴族社会における和歌の位相と実態を知る上での貴重な資料でもある。勅撰集・私家集・物語・日記文学との交渉・関係も無視できない。この作品についてはすでに多くの優れた注釈も備わっているが、最新の研究成果を踏まえた新たな注釈が求められている。また、『大和』のみならず歌物語の読解・研究に資する、重要項目を網羅・整理した辞(事)典の必要性が高まっている。こうした注釈・辞(事)典によって『大和』および歌物語研究の水準が大きく引き上げられることになる。ひいては、王朝文学研究一般、歴史学などの隣接諸領域にも裨益することが大きい。
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