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2022 年度 実施状況報告書

近世前期における史書・軍書類の編纂・出版と情報流通の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00348
研究機関日本大学

研究代表者

倉員 正江 (長谷川正江)  日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70307817)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード香西成資 / 小早川隆景 / 『武田兵術文稿』 / 『黒田家譜』 / 貝原益軒 / 豊臣秀吉の朝鮮出兵
研究実績の概要

本年度は甲州流軍学者小早川能久・小幡景憲の門人香西成資の著『武田兵術文稿』(元禄九年貝原益軒序・宝永五年自序・自跋 京都茨城多左衛門刊 上中下三巻三冊)巻之下所収「豊臣閣下撃朝鮮国論」を考察対象とした。これは豊臣秀吉の朝鮮出兵の中でも特に小早川隆景の活躍した「碧蹄館の戦い」を中心に論じた文章であり、あわせて成資の周辺人物、特に同時期に福岡藩儒であった貝原益軒との交流を追究した。その結果、
(1)成資は能久のために、能久の伯父である隆景と、実父であった毛利秀包を顕彰する目的で執筆し、こうした経緯から二人が活躍した「碧蹄館の戦い」に主眼が置かれている。(2)正徳元年(1711)に朝鮮通信使が来朝した江戸からの帰途、大坂で『武田兵術文稿』数冊を入手し、朝鮮国にもたらしたことを、成資が架蔵本『小幡小早河両師伝』(写本)において言及している。『武田兵術文稿』が朝鮮で享受された形跡は、韓国人研究者金時徳がすでに指摘しているが、この時点で購入された本である可能性が高い。(3)『武田兵術文稿』は大筋では、堀本『朝鮮征伐記』に依拠しているが、能久からの聞書き、成資独自の聞書きを踏まえている。(4)貝原益軒が編纂した『黒田家譜』の記述と類似点が見られるため、朝鮮出兵に関して益軒・成資双方の情報交換があった可能性がある。(5)秀吉の朝鮮出兵に批判的な論調も成資・益軒に共通しており、二人の交流の中でこうした視点が養われた可能性がある。
以上の点を明らかにした。
また、中国・浙江大学にて朱舜水関連のシンポジウム「朱舜水的活動場景和人際網絡」がオンライン開催され、パネリストとして招かれたため、舜水と関連書籍編纂をめぐる水戸藩彰考館員との交流についての従来の研究を補足した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍で地方機関への訪書が制限されていたが、本年度は山梨県立博物館に初めて訪書するなど、かなり改善されて有意義であった。加えて国文学研究資料館の電子版資料公開が進み、複写物の入手が容易になったこと、研究費にて購入した甲州流軍学書などの写本類に、当初の想像以上に貴重な情報が記載されていたことも手伝って、資料の確保が進展し、研究はおおむね順調である。

今後の研究の推進方策

小早川能久・香西成資の著作・伝記資料の収集が進んでおり、解読を進めて近世前・中期における軍学者の実像の考察を継続する。成資の出身地高松藩の藩士と、出仕先福岡藩の藩士との交流や情報交換についても把握しつつある。従来この時期の軍学者は、藩士の教養教育者的な存在として理解がなされている感があるが、特に中国との対外関係についての現実的対応を求められてもいることも判明しつつある。
また従来から取り組んでいる舜水と水戸藩との関係についても、浙江大学シンポジウムにおける中国人研究者の発表に刺激されるところがあった。当方もさらなる充実をはかるべく、研究を継続したい。この分野は、国際的な学術交流にも資すると期待される。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍に加え老朽化等による施設の増・改築の理由から、高松市・福岡市など地方の機関によっては閲覧の制限を継続しているため、訪問できなかった図書館・博物館があった。再度調査の上閲覧可能な施設を絞り込み、次年度使用額は旅費に回すこととする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 『武田兵術文稿』巻之下「豊臣閣下撃朝鮮国論」をめぐって―『黒田家譜』「朝鮮陣」・『懲毖録』を中心に―2023

    • 著者名/発表者名
      倉員正江
    • 雑誌名

      人間科学研究

      巻: 第20号 ページ: 130-156

    • 査読あり
  • [学会発表] 安積澹泊の朱舜水追慕とその後の展開2022

    • 著者名/発表者名
      倉員正江
    • 学会等名
      朱舜水的活動場景和人際網絡
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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