研究課題/領域番号 |
20K00352
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
朝比奈 英夫 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 教授 (50248936)
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研究分担者 |
藤田 洋治 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (60165397)
池原 陽斉 京都女子大学, 文学部, 講師 (70722859)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 万葉集 / 人麿集 / 赤人集 / 家持集 / 次点本 / 伝来 |
研究実績の概要 |
研究代表者(朝比奈英夫)は、万葉集で未解決の問題の一つである、巻19の題詞の矛盾について研究を行い、その結果を研究論文「万葉集巻十九「朝集使掾久米朝臣広縄」の職名について」として公表した。 研究分担者(藤田洋治)は、本研究の周辺領域の研究として、主に近世期の地方における和歌文学の受容と展開について研究を行い、その成果を研究論文「白井固『百首略解』の注釈方法」、「服部正樹『後撰老のすさび』の注釈内容」、「忘れ去られた歌人―服部正樹と近世後期庄内歌壇の偉業―」、学会発表「服部正樹『後撰老のすさび』の注釈内容」として公表した。 研究分担者(池原陽斉)は、本研究の計画に即して研究論文「平安時代前中期における「萬葉歌人」の像:赤人・有間皇子・石上乙麻呂を例に」、学会発表「平安時代前中期の和歌集における「萬葉歌人」の像」として公表した。さらに専門的知見を活かして万葉集の古写本解説「萬葉集:巻第十二断簡(尼崎切」「古万葉切」」、「萬葉集(荒木田久老書入寛永版本)」を執筆した。 令和2年度は、研究環境が著しく悪化したため、研究代表者、研究分担者が、それぞれに独立した形で、各自が進行中の研究を行った。その結果、1,万葉歌人が平安朝において、どのように受け止められていたかを明らかにし、本文の書写伝来意とどまらず、万葉集の伝来と享受の内実の一端を明らかにした。この他に、万葉集そのものの未解決問題である作者の官職名の齟齬について、新見を提示した。また、広く和歌文学の裾野を支える地方の文学活動について、実証的な知見を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響が大きく、対面でのミーティング、実地調査などを、ほぼ行うことができなかった。そのため、研究代表者と、研究分担者2名が、それぞれの課題に即して、各自でできることに着手し、研究を進めることとした。その結果、研究計画に進展が見られた部分があるが、全体を統一的に進行することが難しく、次年度に課題を残すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年3月に、研究代表者(朝比奈)が山形大学に出向き、研究分担者(藤田)と対面で研究会を開催、研究分担者(池原)はオンラインで参加した。その研究会で、令和2年度の総括と令和3年度の研究遂行方針を討議し、以下の諸点を目標として設定した。 内容① 「人麿集」校本の作成 令和2年度までに平安私家集の「人麿集」について、第一類本から第五類本の本文入力を終えていることを確認した。令和3年度は、「人麿集」の校本作成を目標として、入力済み本文データをそれぞれの写本と照合する。 内容② 万葉集次点本対校表の作成 前野貞男『万葉訓点史の研究』を基本的な参考文献として、対校表の形態、作業範囲、作業手順を検討し、2021年夏頃を目処に、具体的な作成計画を立案する。 内容③ 『藻塩草』所載の万葉歌研究 『藻塩草』の新出写本(藤田研究室蔵)と、板本、活字本を確認したところ、本文に相違がまま見られるので、三者を照合して、『藻塩草』所載の万葉歌を抽出して一覧表を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響が大きく、対面でのミーティング、実地調査などを、ほぼ行うことができず、研究計画の主要部分である対面形式による資料の検討会を実施することができなかった。そのため、旅費の支出がかかり少なくなった。また、研究代表者、研究分担者、それぞれの取り組みにも若干遅れが生じたため、予定していた入力作業を次年度に回すこととなった。
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