本研究は1940年代の通俗作家徐クと無名氏の作品を対象として、抗日戦争期における美女表象を分析したものである。 研究成果としては、以下の2点を指摘した。1点目は作品中の美女たちの死が二つに大別されることを明らかにしたことである。即ち、男性・家父長制によって犠牲になった受動的な運命、もう一つは愛国・民族のために自ら選択した主体的な運命である。2点目は、通俗小説とされる作品には、弱者がより弱者の立場に追いやられるという構図が見られるという指摘である。男性たちの大義名分の蔭で、不幸に陥る美女たちの系譜は、実は中国文学の伝統の中にも見出せ、今後の研究の進化・深化により中国文学研究全体への貢献につながる。
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