研究課題/領域番号 |
20K00365
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊藤 加奈子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (80293489)
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研究分担者 |
井上 正夫 松山大学, 経済学部, 教授 (10633274)
氏岡 真士 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60303484)
閻 小妹 信州大学, 全学教育機構, 特任教授 (70213585)
佐立 治人 関西大学, 法学部, 教授 (70340643)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国文学 / 日本近世文学 / 中国経済史 / 中国法制史 / 中国語学 |
研究実績の概要 |
2015年3月に「『杜騙新書』の基礎的研究プロジェクト」として『『杜騙新書』訳注稿初編』を、2018年3月には「『杜騙新書』の研究」プロジェクト」として『『杜騙新書』訳注稿二編』を発行した。この度それらに続く総仕上げとして、2023年3月に「『杜騙新書』の発展的研究プロジェクト」として『『杜騙新書』訳注稿三編』を発行、国会図書館を始めとする全国都道府県立図書館並びに東洋学研究関係諸機関に寄贈した。 『『杜騙新書』訳注稿三編』では第三巻第十七類姦情騙の五十五話から、最終話である第四巻第二十四類引嫖騙の八十四話までの日本語訳と注を完成させた。これにより訳注稿初編・二編・三編とで、『杜騙新書』の全話について日本語訳注を完全網羅する形となった。 底本である『杜騙新書』明刊本は日中米の6か所に所蔵されるが、保存状態の違いこそあれ字句の異同が無いことが確認できている。なお当初は新型コロナウイルス流行の収束を期待して中国等海外所蔵の資料調査のための旅費を計上していたが、移動に関する制限が予想を超えて長期化したため、その調査が叶わなかった。この度の訳注稿の作成作業においては、請求や懇求の意味である「央」が「鞅」と表記され、現在における漢字についての定義定説から見れば誤字に見えるのであるが、『杜騙新書』においてはそれが頻出しており、独自の規範意識を窺わせている。文言白語が混交され、また明代当時の福建方面の方言を交えていることが 予想される『杜騙新書』の言語学的特徴については、漢字表記と用法も含めて今後も検討課題である。現時点で確認される写本5種は、所見によれば明刊本に忠実たらんとして誤脱を免れないが、後世の書き込みによって正されてゆく傾向にあり、その過程をたどることは、江戸時代における中国書の受容を考えるためにも興味深い資料を提供する。
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