研究課題/領域番号 |
20K00367
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 達明 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90456814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 韓愈 / 古文運動 / 天人観 |
研究実績の概要 |
前年度から引き続き、韓愈・柳宗元・劉禹錫の天論の分析と韓愈の天人観に関する研究を進めた。韓愈の詩文については前年度に一通り目を通したが、特にその詩については、正確な解釈のためには更に検討が必要な状態にあった。本年度末までに、従来から参加していた韓愈詩の研究会では、全ての韓愈の詩を検討し終え、それを通して本研究課題に関しても十分な知見を得ることができた。この研究会の検討の成果は『韓愈詩訳注』第三冊(全五冊中)として刊行され、来年度には第四冊目の刊行を予定している。 また韓愈と李コウの共著とされる『論語筆解』について読解と検討を行った。韓愈の天人観の分析は、主に韓愈が特定の人にあてた手紙文や墓誌銘などに基づいて行われているが、それらは相手との関係や社会的な要請などの影響が強くはたらくテキストであり、韓愈の思想を考える際には、そのバイアスについて慎重な判断が求められる。『論語筆解』は、『論語』の注釈としての評価は高くなく、韓愈の著作の中ではあまり注目されてこなかったと言えるが、上記のようなバイアスの問題に関しては、手紙文や墓誌銘とは異なる性質を持つがゆえに重要な根拠を提供するものである。調査の結果、天人観の分析において参照すべき要素が含まれることがわかった。以上の知見を踏まえて、本研究課題の中心となる、韓愈の天人観の特徴に関する論文を執筆中である。 今年度は、天人観に基づく「逸脱の文学」の説明についても研究を開始し、先行研究の整理と特に揚雄の文章の読解を進めた。この点に関しては、天人観との関わりも含めて、使用する語彙やモチーフの重なりから、『荘子』の影響の重要性について改めて検討する必要があると考え、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型感染症の流行の影響は今年度も残り、海外はもとより他大学での調査も本年度の前半までは難しく、計画通りに進められない部分もあった。その結果として、オンラインでの研究会も含め、前年度に比べればかなりの程度計画通りに進めることができたものの、前年度の遅れを取り戻せるほどには到らなかったため、上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは韓愈の天人観についての検討の成果を発表する。その後は、柳宗元・劉禹錫ら同時代の文人のみならず、先駆的な古文家や中唐における諸子学の隆盛の中に求めることで、その天人観の思想史の中に位置づける。合わせて天人観を仲介にした「逸脱の文学」と「載道の文学観」との接続について分析を進める。それにあたっては、まずは韓愈における天と「道」との関係性の考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で予定していた遠隔地での研究会や学会がオンライン開催となったことで、旅費の支出がなくなったことが主な理由である。図書購入やオンライン学会参加のための機器の購入に充てたが、2020年度からの繰り越し金もあり、全て使用するには到らなかった。 次年度は感染症の影響は更に限定されることが期待できるため、当初の研究計画の通りに経費を使用するほか、2021年度までの未使用額については、国内の遠隔地での調査など、これまでに先送りしていた活動のために使用する予定である。
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