本研究成果の学術的意義は、以下の二点に整理できる。(1)従来守旧的な天人相関説として捉えられていた韓愈の天人観について新しい捉え方を示し、従来の柳宗元・劉禹錫を中心とした中唐の天人観の議論に新しい視角を提供した。(2)天人観に基づく分析により、「孟東野を送る序」に、「不平」の文学論の他に、西洋の霊感論にも通じる特異な「受動の文学論」の考えが見られることを明らかにし、それが韓愈の『荘子』の受容によってもたらされた可能性を示した。 韓愈は、日本の教科書にも取りあげられる重要人物であり、その基本的な思想や文学観について新しい見方を示したことは、社会的な意義を有する。
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