研究課題
中国のビザ免除再開を待ち続けた後半の2年間だったが、重慶の現地調査を中心とする研究課題は、コロナ禍と重なり、残念ながら変更を余儀なくされたと言える。研究例会は、8月と3月の2回開催した。第1回は8月23日に台北で対面で、また第2回はオンラインで3月28日に、メンバーがそれぞれの研究経過を持ち寄って報告した。最終年度は、各メンバーが個別の課題について研究を進めることとなった。 主なものを挙げると、中野は重慶を経て戦後台湾に渡った王平陵の作品が、1950年代後半に「自由」を強調するようになることを反共文学との関連から論じた。奥野は、重慶郊外の北碚で刊行された雑誌『北碚月刊』を調査した。城山は、重慶で活動したこともある漫画家の葉浅予が、中華人民共和国建国前後に中国画に転じたことを論じた。杉村は、予且「浅水姑娘」における不幸を嘆く女性の形象を論じた。高橋は、中国に関するものでは中国における水泳の表象を分析し、「身体をみせること」の問題系を論じたほか、勤務先である高知と文学、またポーの小説など、幅広いテーマに取り組んだ。中村は、久保田万太郎の戦時下上海への訪問と観劇の問題、『改造』「現代支那号」(1926)を通じて見た同時代小説としての中国文学と日本語の問題、内山完造と第三回大東亜文学者大会など、戦争と日中文化交流の問題について研究した。一見すると重慶から離れたテーマもあるが、いずれも戦前から日中戦争を経て戦後に至る時期に、中国の知識人が時代の変化に対応する様子を捉えたものであり、その舞台の一つとして重慶も関わっている。またいずれも、異文化交流という視点を含むものとなっている。
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日本アジア言語文化研究
巻: 18 ページ: 31-40
日本女子大学文学部紀要
巻: 73 ページ: 115-127
高知大国文
巻: 54 ページ: 65-78
国際社会文化研究
巻: 24 ページ: 71-85