研究課題/領域番号 |
20K00375
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小川 利康 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70233418)
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研究分担者 |
長堀 祐造 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 名誉教授 (40208046)
工藤 貴正 愛知県立大学, 外国語学部, 名誉教授 (80205096)
秋吉 收 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90275438)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 周氏兄弟 / 『語絲』 / 魯迅 / 周作人 |
研究実績の概要 |
本年度もコロナ禍のもと研究代表者、分担者それぞれ個別に資料収集ならびに研究活動を行った。 代表者小川は『語絲』時期における周作人の研究を進めるとともに、周作人の思想に新たな角度から光を当てるべく、周作人と優生学の関係について考察を進めた。優生学に限らず、進化論は周氏兄弟の生涯にわたる思想を通観するうえで重要な視点であり、『語絲』時期の思想とも重要な関連を持つためである。 周作人は、日本留学帰国後の紹興時代から児童教育に関心を寄せた。教育によって児童の健全な成長を願うだけでなく、中国と中国人が生存競争のなかで淘汰されぬ資質を涵養すべきと考えたためである。だが、後天的な教育だけでは不十分であり、先天的な形質を決定する「遺伝」に重大な関心を寄せ、19世紀からイギリスで発達した優生学に関連する文献を翻訳紹介した。日本留学時代から傾倒していたハヴロック・エリスもまたイギリス優生学協会の有力メンバーであり、優生学は当時科学的で合理的な思想として受けとめられていただろう。 だが、優生学は先天的能力を人為的に選別するものであることは明白で、五・四運動期に入って、日本の「新しき村」運動の影響により平等な互助主義社会の理想に傾倒すると、優生思想との間で矛盾に苦しむことになった。雑誌『語絲』時期にエリスを言及引用するなかで、周作人は新たな中庸論を展開し、そのなかで優生学と互助主義の矛盾を解消したかに見える。 如上のような問題意識を発展させ、新たな研究の地平を切り拓きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はワクチン接種でコロナ禍が終息するのを期待しつつ、対面による各種シンポジウムの開催の可能性を探り続けた一年間であったが、気体はすべて水泡に帰した。次年度は対面での開催は立案段階で断念することで、小規模でも速やかに密度の濃いシンポジウムの開催実現にこぎ着けたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度こそ周氏兄弟に関する国際シンポジウムの開催を実現し、そのシンポジウムを通して内外の研究ネットワークを広げ、新たな研究の地平を切り拓く論文集の刊行を実現したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のもとで想定していたシンポジウムが開催できなかったため
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