研究課題/領域番号 |
20K00377
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴崎 公美子 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (70844140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 清代 / 中国通俗文芸 / 家将小説 / 出版文化 / 薛家将 / 説唐 |
研究実績の概要 |
清代においては小説の「続書」の創作および「シリーズ化」が盛んに行われた。薛家将小説である『説唐後伝』ならびに『説唐三伝』もまた、清乾隆期に唐建国物語である『説唐全伝』の続編即ち「続書」として刊行された。薛家将小説はシリーズ小説化された初めての家将物語であるといえ、その物語の拡大・発展と清代の文学シーンにおける続書創作・シリーズ化という現象を関連づけて考えることが本研究の目的である。 2020年度は本研究の初年度にあたり、『全伝』、『後伝』、『三伝』の版本の刊行状況を調査、整理するために、国内外に所蔵されるテキストを可能な限り多く閲覧、収集する予定であった。しかし、所蔵の中心地である中国からCOVID-19の流行が始まったため渡航が不可能となり、日本でも感染が拡大し始めると国内での研究活動もままならなくなった。 そこで、現在は本研究を着想するに至ったきっかけである「羅通掃北」物語の二種類のテキストの調査分析を進めている。一方は『説唐後伝』の冒頭に所収される「羅通掃北」部分で、もう一方は『説唐小英雄伝』 と題されて独立して刊行されたと思しい。双方は前者が繁本、後者が簡本とも見なせるスタイルを持ち、「説唐」小説がどのように刊行されていたのかを知る上で興味深い手がかりになると思われる。両テキストの特徴を可能な限り詳細に分析し、今後改めて資料収集が可能になった際、収集した資料の分類に役立てられるような準備を進めている。 シリーズ化については、並行して行なっている別の研究(研究課題番号19K23053 研究活動スタート支援「清代における「薛家将」故事の発展と拡大に関する研究」)で、系統を異にする「興唐物語」と「薛家将」物語とが「説唐系列」小説として結びつくにあたって、「羅家将」物語における「報復」が大きな役割を果たしているという結果を得た。この知見も本研究に役立てたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」にも書いたように、研究所年度である2020年には、国内外に所蔵されるテキストを調査することを計画していた。しかし、COVID-19の発生、流行によりテキスト調査ができなくなったので、大幅な計画変更を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
いつ国外研究が再開可能になるか未だ未知数なので、以下のように考えている。 1:現在閲覧可能なテキストを詳細に分析し、ある程度の系統づけを行なっておく。 2:可能であれば郵送などで資料を収集する。 3:テキストの刊行にまつわる社会状況など、周辺情報の整理、理解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の大部分を旅費と資料収集費に当てているが、COVID-19の流行により国内外の移動が禁止、あるいは自粛となった時期が続き、全く予算消化できなかった。 次年度は郵送複写を依頼するなどして、移動せずに資料収集する方法を模索する。
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