研究課題/領域番号 |
20K00377
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴崎 公美子 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70844140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 清代 / 中国通俗文芸 / 家将小説 / 出版文化 / 薛家将 / 説唐 |
研究実績の概要 |
2022年度もCOVID-19の流行のために中国へのビザなし渡航が実施されないままであり、渡航しての資料収集が不可能な状態が継続していた。ただ、国内の移動は緩和されたため、長野県の飯田市立図書館に所蔵される三槐堂藏板『説唐三伝』(『異説後唐傳三集薛丁山征西樊梨花全傳』、以下『三伝』とする)十卷八十八回を調査することができた。また、『三伝』のテキストに関しては東洋文化研究所雙紅堂文庫蔵の同治二年金玉樓刊本も電子データが公開され、排印本ではあるものの九洲図書出版社の『珍品説唐・説唐征西伝』と巴蜀書社等による中国神怪小説体系史話巻『樊梨花全伝・平金川』を入手したことで、大まかなテキスト比較が可能となった。排印本は底本が明記されず、活字にした段階で底本からどれだけ改められたかを推定もできないので対校に用いることはできないが、それでも大陸の版本を確認できない現状では見逃し難い手がかりの一つであるし、活字になった結果も受容の一形態であると見做せる。それらのテキストと、現在最も通行している上海古籍出版社刊古本小説集成所収の經文堂本とを比較すると、經文堂本は一部石印本テキストで補われている箇所もあり上質な版本とは言えないが、それでも現在目睹できる『三伝』テキストでは最も古い形態を保持しているものであろうと判断された。『三伝』のテキストは文章や語句の修改の様相がそれぞれ異なっており、多くの書坊から何度も新刻された様子が伺える。それらテキストの差異を可能な限りまとめ、大陸へ渡航してのテキスト調査に備えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内でできるテキスト調査状況は改善したが、中国大陸へ渡航しての調査は未だ停滞状態にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に入手できた『三伝』テキストの詳細な分析を続行する。また、京都大学所蔵の維經堂本、掃葉山房刊本の調査にも着手したい。 テキストの刊行にまつわる社会状況など、周辺情報の整理、理解も合わせて進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の大部分を旅費と資料収集費に当てているが、COVID-19の流行により国外旅費の予算が消化できなかった。国内の資料調査環境は改善されたので、その調査費として活用する。また、中国へのビザなし渡航が可能になればその調査費として活用する。
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