研究課題/領域番号 |
20K00378
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
松家 裕子 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (20215396)
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研究分担者 |
小南 一郎 公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 名誉館長 (50027554)
磯部 祐子 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (00161696)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宝巻 / 宣巻 / 目連戯 / 浙江 / 講唱文藝 |
研究実績の概要 |
本研究は、宝巻を中心とする中国の講唱文藝を対象とし、テキストや歴史文献の調査とともに、中国において今もつづけられているこうした文藝の上演を実地に調査することを研究の柱としている。しかし、2021年度も、実地調査を行なうことはできなかった。 このような逆境ではあるが、各人それぞれ文献調査を進め、一定の成果を得た。松家は、清末の『惜穀宝巻』について、「作者のある宝巻」と結論した前論文の内容を、先行研究と周辺テキストの調査によって発展・深化させ、この宝巻の作者が、清末、江南地区の著名な慈善家・演劇作家の余治であることを明らかにし、その内容を論文(「晩清『惜穀宝巻』的特点和作者」)にまとめた。宝巻は作者名の記されないジャンルで、ごく一部の作品を除き、作者についての研究がなされてこなかったから、宝巻研究の新しい方向を示したということができるだろう。小南は、宋元明清時期の目連救母故事について、物語り文芸と戯曲とを中心に据え、その展開の様相を論文「目連戯ー舞台上の活化石」(『説話・伝承学』第30号に発表予定)にまとめた。磯部は、実地調査を補う新しい手法として、Webを活用した研究法を確立、これまで実地調査を行なってきた浙江省の「平湖バッ子書」「金華道情」「温州鼓詞」などの藝能について、インターネット上で公開されている、新型コロナウイルス感染防止にかかわる新しい作品を翻訳・分析して、論文「浙江省における新型コロナウイルス禍下の曲芸」にまとめた。研究協力者の要木(藤田さん)は、浙江省紹興、湖州、嘉興など、本研究の調査対象地域について、救荒(飢饉対策)商品経済、小都市経済、特に米穀流通システムを中心に、歴史文献の調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査を進めているが、海外に渡航できる状況になく、中国における実地調査や、この研究で当初計画していた中国を含む日本以外の地域の研究者との交流もできていないことから、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
中国を含む海外にむりなく渡航できるようになれば、浙江省における各種講唱文藝の上演の実地調査を再開し、また海外の研究者との実地の交流を行ないたい。 文献調査について、松家は、1宝巻の英語による研究成果の把握、2清末の宝巻テキスト(『英台宝巻』など)の精読、3鄭振鐸『中国俗文学史』「宝巻」の章の翻訳、の3つを進める。小南は、民間文芸とそれを支えた社会について、主として宗教的な視点から分析を加えるための資料を調査、考察を加える。磯部は、新型コロナ禍のなかで生まれた現代の河西宝巻「戦瘟神宝巻」の翻訳を進め、そこに表れた民間宗教意識の分析を進めるとともに、浙江における宝巻との相違についても考察する。研究協力者の要木(藤田)さんは、明清期江南地区の救荒(飢饉対策)、慈善、米穀流通システムを中心とする経済方面の調査を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響により、講唱文藝の上演の実地調査や海外の研究者との交流を目的として中国ほか海外に渡航することが、不可能になっているため、次年度使用額が生じた。 2022年度には、中国における実地調査を再開するとともに、中国を含む海外の研究者を訪問あるいは招聘して、研究交流を行ないたいと考えており、研究費は主としてこれに使用する。ただし、目下、楽観できない状況にある。上記の計画が遂行できなかった場合、本研究の研究期間である2020-2022年度3カ年全期間にわたって、実地調査も海外の研究者との交流も行なうことができなかったことになるため、研究期間を1年延長する可能性がある。
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