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2020 年度 実施状況報告書

マーク・トウェイン晩年の批評精神――まなざしは〈笑いの武器〉のその先へ

研究課題

研究課題/領域番号 20K00381
研究機関東北大学

研究代表者

井川 眞砂  東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (30104730)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードマーク・トウェイン / ユーモア / 〈笑いの武器〉 / アメリカ19-20世紀転換期 / 『マーク・トウェイン自伝』 / アメリカ南西部ユーモア / 19世紀アメリカの文学的コメディアン
研究実績の概要

本課題「マーク・トウェイン晩年の批評精神――まなざしは〈笑いの武器〉のその先へ」は、トウェイン晩年期研究の一環であり、トウェインがユーモアのレトリックを〈笑いの武器〉として行使後、そのレトリックをさらにいかに活用するかを探ろうとする。〈笑いの武器〉として行使する彼のユーモアのレトリックは、すでに、芸術活動における自我実現の範囲を超えて社会的な在りようを示しており、よりひろい地上のグローバルな視座を獲得している。その後は、地球さえもが広大な宇宙の中で相対化され、人間存在は個としてというより人類として捉えられ、もはや作家個人の自意識や自我の内での思索を超えて、人類の課題が思考される。こうした晩年の批評精神を分析することにより、ユーモア作家としてスタートした本作家のユーモアのレトリック(修辞)の変容と発展を吟味し、トウェイン晩年像の新たな構築に積極的に貢献することを目指す。
当初の実施計画ならびに新たに生じた検討の必要性から、本課題初年度は以下の内容で進めた。1.バフチンのカーニバル論の適用はいかに有効か。バフチン著『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』を読み、トウェインの "The Man That Corrupted Hadleyburg"を考察→その適用が可能との判断から、考察を展開中。2.アメリカ南西部ユーモアの伝統からの影響ばかりか、他に19世紀アメリカのLiterary Comedianから受けた影響の大きさや、その平等主義の精神は無視できないもの(参照:David E. E. Sloneの研究[1979]=トウェインのユーモアの特徴ならびに晩年期の批評精神の考察に有益)→本課題の考察に取り込む。3.1877年ホイッティア誕生祝賀スピーチ事件を見直す晩年期トウェインのユーモアのレトリックを考察→『マーク・トウェイン自伝』論として執筆開始。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の実施計画から見れば、やや遅れている。ただし、トウェインのユーモアを晩年期のみならず、その出発時からの見直しによって「19世紀アメリカの文学的コメディアン」からの影響の大きさを再確認できた収穫は大きい。その視野を<マーク・トウェインとユーモアの修辞学>といったより広い視野から発展させる必要性を強めることができたと認識している。本課題の遂行にあたり、こうしたより広い視野を忘れないようにしたい。
Sloneの編集による_Mark Twain's Humor: Critical Essays_(1993)や、広瀬典生著『アメリカ旧南西部ユーモア文学の世界』(2002)、それに Lawrence W. Levine, _Highbrow / Lowbrow: The Emergence of Cultural Hierarchy in America_(1988); Henry Nash Smith, "That Hideous Mistake of Poor Clemens's "(1955); H. N. Smith, _Mark Twain: The Development of a Writer_(1962); Harold K. Bush, Jr., "The Mythic Struggle between East and West: Mark Twain's Speech at Whittier's 70th Birthday Celebration and W. D. Howells' 'A Chance Acquaintance'"(1995); Jerome Loving, "Birthday Party Brouhaha"(2008)等が非常に有益だった。結論としては、内容的な進捗があったと考えている。

今後の研究の推進方策

まず、今年度取り組んだバフチンのカーニバル論の適用("The Man That Corrupted Hadley burg"論)をまとめ、執筆する。ついで、『マーク・トウェイン自伝』論として、ユーモアの観点から(晩年期トウェインの批評精神を)ホイッティア誕生祝賀スピーチ事件の見直しを示すトウェインとして論じる。
今後の推進方策としては、<マーク・トウェインとユーモアの修辞学>といったより広い視野から本研究課題「マーク・トウェイン晩年の批評精神――まなざしは〈笑いの武器〉のその先へ」を遂行することになろう。それによって、トウェイン晩年期の批評精神考察のバックグラウンドが広がるだろう考えている。

次年度使用額が生じた理由

1.コロナ禍により、出席予定の学会がオンライン化されたり、資料収集を断念したりして、主要には旅費等の支出が無かったことによる。
2.それを翌年度分の物品費(当初から抑制気味だった)に充てたい。
3.ただし、翌年度分に計上している国外旅費については、やはりコロナ禍により(アメリカニューヨーク州で開催予定の)国際会議が1年延期決定されたため、計上している経費についても1年延期する必要が出てこようかと思う。令和4年度の海外出張費用は計上していないからである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 文献紹介「アメリカ合衆国の人種をめぐる歴史理論書――ホワイトネス・スタディーズに着手する David R. Roediger, _The Wages of Whiteness: Race and the Making of the American Working Class_ (1991; Revised ed., Verso, 1999).2021

    • 著者名/発表者名
      井川 眞砂
    • 雑誌名

      _New Perspective_(新英米文学研究)

      巻: 第51巻、1号・2号 ページ: 87-89

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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