| 研究課題/領域番号 |
20K00389
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| 研究機関 | 山口大学 |
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研究代表者 |
池園 宏 山口大学, 人文学部, 教授 (90222869)
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| 研究分担者 |
荘中 孝之 京都女子大学, 文学部, 教授 (70390101)
松田 雅子 長崎外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (90249665)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | カズオ・イシグロ / 文学 / 音楽 / 歌詞 / アメリカ文化 |
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| 研究実績の概要 |
本共同研究の2年目の主な活動は、基本的に初年度からの継続、すなわちアメリカのテキサス大学ハリー・ランサム・センターに所蔵されているカズオ・イシグロの歌詞手稿の解読および分析作業であった。2年目も新型コロナウィルスの影響によりアメリカでの現地調査がかなわなかったため、過去に入手済みの資料をもとに、初年度を上回る計9回のZoomによる研究会を開催し、議論を深めることができた。新たな試みとして、分担発表者が各歌詞の邦訳と主題の抽出を行ったが、この丹念な作業によって、修業時代におけるイシグロの活動の軌跡をさらに詳しく確認することができた。
さらに各研究者は独自に以下の活動も行っている。池園宏（研究代表者）は論文「Nocturnes: Five Stories of Music and Nightfallにおける音楽とプロフェッショナリズム」を執筆し、イシグロが音楽を前景化した作品集について論じた。また、イシグロの出身地である長崎市の公開講座において、「カズオ・イシグロ再考：その文学的諸相を巡って」と題する講演を行った。松田雅子（研究分担者）は、同公開講座における講演「最新小説『クララとお日さま』の魅力を語る」、ならびに長崎外国語大学主催の公開講座「カズオ・イシグロ作品に関する読書会」の講師を務め、双方においてイシグロの歌詞内容を取り入れた解説を行った。読書会ではイシグロの生家や作品の舞台となった神学校の実地見学も行っている。また、論文「イシグロの描いた被爆マリア：『不思議なときおりの悲しみ』における被爆者の表象」を執筆し、初期作品におけるイシグロの原爆表象について論じた。荘中孝之（研究分担者）は、音楽文化研究の一環として、音楽をフィーチャーした洋画『レイ』と『ボヘミアン・ラプソディー』の解説を本年度中に執筆しているが、その収録書籍の刊行は次年度早々となる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開始年度直前に生じた新型コロナウィルスの影響が依然として続いており、アメリカのテキサス大学やその後に訪問予定のイギリスでの現地調査に支障が生じたため、当初計画していたスケジュールよりも全体としてやや遅れる結果となっている。しかしながら、Zoomでの研究会を定期的に重ねることにより、すでに入手していた資料については少なからず分析を進めることができている。
さらに、海外渡航のみならず、国内における諸学会や他の研究会等への参加も従来のようには行えない状況が続いており、結果としてそれらによる本研究への直接間接的な還元効果も十分に得られていない。これはそれらの用途のために計画していた当初予算の使用にも関わるもので、予算消化の遅延への対応も今後の継続的検討課題の一つである。
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| 今後の研究の推進方策 |
共同研究の素材であるイシグロの手稿データは膨大なため、全体像の把握にはさらに時間を要するものの、今後もこの作業は定期的、継続的に行っていく方針である。同時に、海外諸国で出入国の規制緩和が進んでいる国際的状況を勘案し、本研究の遂行に必要なアメリカとイギリスでの現地調査を順次実施できるように計画の立て直しを行う。まずは初年度に予定していたアメリカ渡航を3年目の年度内に行えればと考えている。イギリス渡航についてはスケジュール的にそれ以降となるが、このために科研費の期間延長申請も視野に入れている。
また、国内の移動に関しても規制緩和の方向にあるので、これまでと同様にZoomやメール等の手段を用いた作業に加え、状況を見ながら対面での研究会も開催し、共同研究の成果をさらに深めていければと考えている。さらに、各研究者はこの共同研究によって得られた知見を役立てながら、独自に設定した研究課題に取り組む。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、海外における各種現地調査、および国内における研究打ち合わせや学会出席などの出張に要する予算が未使用に終わったため、これらを基本的に同じ用途で繰り越し、次年度予算との合算で有効活用する計画である。同時に、従来予定していたカズオ・イシグロ研究関連の各種書籍・資料の購入や海外渡航に関わる費用などを、重要度に応じて柔軟に拡充することにより、研究目標に即した実質的かつ効率的な予算消化を目指す。
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| 備考 |
池園宏：「カズオ・イシグロ再考：その文学的諸相を巡って」、長崎市中央公民館公開講座「カズオ・イシグロの世界～心のふるさと長崎～」、2021年6月26日
松田雅子：①「最新小説『クララとお日さま』の魅力を語る」、長崎市中央公民館公開講座「カズオ・イシグロの世界～心のふるさと長崎～」、2021年6月27日 ②長崎外国語大学主催「カズオ・イシグロ作品に関する読書会」講師、2021年8～12月（5回）
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