研究課題/領域番号 |
20K00390
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小林 正臣 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30404552)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハーマン・メルヴィル / バートルビー / オフィス・フィクション |
研究実績の概要 |
メルヴィル研究の成果として、著書The Multiverse of Office Fiction: Bartlebys at WorkをPalgrave Macmillanより出版した。
本書では、アメリカ文学において未開拓の研究領域であった「オフィス・フィクション」(office fiction)すなわちオフィス・ワーカーをめぐる文学を体系化した。方法としては、これまで注目されて来なかったホワイトカラーのオフィス・ワーカーに着目し、その元型をハーマン・メルヴィル「書写人バートルビー」(Bartleby, the Scrivener)におけるタイトル人物に見出した。そして、この人物が以後の作品においてどのように〈バートルビーたち〉として再創造されてきたのかを探究し、体系化を行った。かくして、様々なバートルビーの末裔を再発見することで、既存のバートルビー像に依存しない新たな文脈を提示することで、新たな研究領域を開拓した。尚、各章の概要等は<https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-12688-8>にて参照されたい。
本書を契機としてメルヴィル研究の新展開を図るため、「書写人バートルビー」だけでなく、『白鯨』(Moby-Dick; or, The Whale)に代表される諸作品も視野に入れた研究を行っている。その一つの試論として、『白鯨』論を脱稿した。本稿では、ポストヒューマニズムの隆盛を意識しながら新しい人文学、すなわち〈ポスト・ヒューマニティーズ〉を目指す試みとして、同作品におけるヒトとモノの関係性に新たな視点を導入している。この視点の有効性を実証するためにも、本稿は所属学会へと投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実績は、前回の科研費研究の延長に相当する。したがって、残りの期間で今回の科研費研究へと更に接続させることを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
前回の科研費研究と今回の科研費研究はメルヴィル研究という共通項があることから、今後は両社の更なる接続を図る。そのためには、前回における「書写人バートルビー」研究だけでなく、『白鯨』・その他の諸作品も視野に入れることで、「エイハブたち」を発見する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた調査研究および学会参加等が行えなかった。コロナ禍も緩和されたことから、次年度は本来予定していた研究を遂行する。
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