研究課題/領域番号 |
20K00391
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
野末 紀之 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (70198597)
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研究分担者 |
高橋 章夫 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (10527724)
藤井 佳子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (70379527)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 男性性 / オスカー・ワイルド / コスモポリタニズム / アラン・ガーナー / ビリー・ブラッグ / ブレクジット / F・W・ファラ― / エドマンド・ゴス |
研究実績の概要 |
2020年度は、Covid-19の影響により、科研テーマの追求は必ずしも満足のゆくものとはならなかった。とりわけ海外での資料調査を計画していたメンバーにとっては。それでも研究会を9月(一部オンライン)と3月(対面)に、テーマの近接する他の科研(「後期ヴィクトリア朝イギリスにおけるファッションとダンディズム」)と合同で行ない、議論を通じて有益な知見を得た。研究代表の野末は、研究会でE・ゴスの詩と小説における男性性の表象について考察した。また『オスカー・ワイルド研究』第19号に、最新の研究書の書評を掲載した(Michael F. Davis and Petra Dierkes-Thrun,eds., Wilde’s Other Worlds)。分担者の藤井は、研究会でF・W・ファラ―の学校物語における男性性に関して発表した。また英語圏児童文学会西日本支部の3月の研究会で、Alan Garner著The Owl Serviceに関する研究発表を行ない、中産階級の少年と貧しい労働者階級の少年が、異なる環境で男性性を獲得し成長していく過程を分析した。分担者の高橋は、研究会で近年の男性性研究の代表的書籍を紹介し、また論文「ビリー・ブラッグとブレグジット」で、第一次世界大戦後の軍国主義を批判する曲や、男性による暴力の犠牲者となった女性を語り手とする曲を書いてきたブラッグが、ブレグジットに反対する曲を書くに至るまでの過程を論じた。 以上の研究成果は当初の計画とはやや異なる領域・時代を含んでいるが、これまでの研究を踏まえたうえでの豊穣化・新たな一歩ととらえることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この評価は、Covid-19の影響を考慮してのものである。研究会2回ではほぼ計画どおりのテーマでそれぞれ発表し、議論により考察を深めることができた。野末は、唯美主義の理解者であったE・ゴスの多方向的な愛の表現が、さほど挑戦的ではないとはいえ、男性性の再定義を試みたものであることを明らかにした。藤井によるファラ―作品の考察は、彼の学校物語の総合的研究へとして発展してゆくことが期待される。高橋のブラッグ作品の分析は、第一次大戦から現代にいたるイギリス社会における男性性の問い直しの検討として意義がある。学会での研究発表および論文の数は少ないが、それぞれ資料を収集して調査と分析を継続中である。2021年度に海外調査をどこまで実現できるか現時点では不透明だが、成果の発表に向けて着実に準備したい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も引き続き他の科研との合同研究会の開催、各自の所属する学会での研究発表や学会誌における論文掲載をめざすが、これらに加えて、講師を招いての研究会あるいはシンポジウムの開催を行ないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響により、海外での資料調査ができなかったことによる。次年度にはメンバー全員がそれぞれ計画した研究施設に赴いて実現したいが、現時点では不透明である。
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