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2022 年度 実施状況報告書

19世紀後半~20世紀初頭の英文学における階級横断的な男性性の再定義の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00391
研究機関大阪公立大学

研究代表者

野末 紀之  大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (70198597)

研究分担者 高橋 章夫  大阪公立大学, 大学院文学研究科, その他(移行) (10527724)
藤井 佳子  大阪公立大学, 大学院文学研究科, 非常勤講師 (70379527)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード男性性の再定義 / 唯美主義 / 児童文学 / 第一次世界大戦 / 共感・共苦 / 少年間の友情
研究実績の概要

代表の野末紀之は、ワイルド協会第47回大会(12月3日、実践女子大学)でのシンポジウム「ワイルドとその周辺における男性性の再定義をめぐって」において、男性性の孕む他者の身体への暴力を否定し、女性性をおびた「共感・共苦」を男性主人公の敏感な感受性のうちに取り込もうとするペイターの戦略について研究発表を行なった(題目「ペイターにおける審美化と「男性的」欲望」)。藤井佳子は、同じシンポジウムで「学校物語と男性性-Boy's Own PaperとTalbot Baines Reedの作品を中心に-」と題して研究発表を行なった。Reedの学校物語を『トム・ブラウンの学校物語』や『エリック、少しずつ成長』と比較した結果、それぞれ、忍耐や抑制といった精神的な男性性規範の表象、蔓延する少年同性愛の示唆、少年同士の「プラトニックな」愛情の描写といった違いがみられることを明らかにした。高橋は、研究論文「キプリングの「海の巡査」における男性性の表象」を『人文学論叢』第24号(愛媛大学人文学会、39-49頁)に掲載した。キプリングにおける男性性の揺れについて考察したものである。すなわち、戦争が進むにつれて、キプリングは、大戦初期に提示していた理想的男性性像を否定的に扱うようになり、より野蛮な表象を提示するにいたったことを論じた。いずれにも、それぞれの担当分野で科研テーマを追求した成果であるが、来年度は、各自の研究のまとめを行なうとともに、階級横断的な「重層性」により焦点を当てるべくつとめたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ対策により海外での調査ができなかったため、当初の計画が進まなかった面は否定できない。とはいえ、野末と藤井は成果をシンポジウムで発表し、高橋は論文としてまとめることができたため、上記の評価としてよいと思われる。

今後の研究の推進方策

野末は、唯美主義の男性性にたいする女性作家からの批判の内実を調査するとともに、ペイター、J・A・シモンズらによる男性性再定義の試みについてさらに研究を進める。藤井は、パブリック・スクールを舞台にした作品を対象として、少年同士の友情と、友人間や教師から期待される「男らしさ」およびその変遷を探る。具体的には相模女子大学学術情報センター所蔵のReligious Tract Society関連資料とBritish Library所蔵資料を調査して、当時の社会的規範と教育が創りあげた「男らしさ」を明確にする。高橋は、コロナウイルスの影響でこれまで実施できなかった戦没者の追悼に関する資料調査を海外で行ない、戦後、男性性を再構築するにあたりキプリングが果たした役割を中心に研究を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルスの影響で、海外での調査がかなわなかったことによる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] キプリングの「海の巡査」における男性性の表象2022

    • 著者名/発表者名
      高橋章夫
    • 雑誌名

      人文学論叢

      巻: 24 ページ: 39-49

    • 査読あり
  • [学会発表] ペイターにおける審美化と「男性的」欲望2022

    • 著者名/発表者名
      野末紀之
    • 学会等名
      日本ワイルド協会
  • [学会発表] 学校物語と男性性―Boy’s Own Paper とTalbot Baines Reedの作品を中心に―2022

    • 著者名/発表者名
      藤井佳子
    • 学会等名
      日本ワイルド協会

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公開日: 2023-12-25  

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