研究課題/領域番号 |
20K00393
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
伊東 裕起 城西大学, 語学教育センター, 助教 (70617448)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | W. B. イェイツ / アイルランド文学 / ナショナル・アイデンティティ / 能楽 / ヨネ・ノグチ / 広重 / 浮世絵 / オリエンタリズム |
研究実績の概要 |
令和4年度は、昨年度の学会発表で扱った戯曲『骨の夢』について論文化して発表した。また、昨年度の報告書における計画通り、ヨネ・ノグチ(野口米次郎)の『広重』とイェイツの関係について分析を行い、学会発表を行った。 発表の概要は以下である。イェイツは1921年、ノグチによる同書を読み、その感動を彼に手紙で伝えている。その際、イェイツが称賛したのが、日本美術の “simplicity”であった。イェイツのこの手紙の文言について、日本美術についての彼の考えがステレオタイプ的、オリエンタリズム的ではないかとの指摘がある。しかしイェイツの日本に対するオリエンタリズムは少し特殊であった点を見落としてはならない。それと同時に、ノグチの『広重』に対する見方も特殊であった。ノグチは『広重』で単純に日本のアートはシンプルだ、と言っているのではない。自らの “subjectivity”によって自然を捉えなおし、自然に”subjective”な内面を投影するのが、ノグチの言う『広重』の ”simplicity”である。しかもその”simplicity”は江戸時代という、武士中心の貴族的な社会が崩壊する直前に最高になったという。これはイェイツの”antithetical”な美に通じるものがあり、また彼の神秘主義哲学書『ヴィジョン』の歴史観とも共通点が見いだせるものである。1921年当時イェイツは、各所で”simple”になれない自分について悩んでいることを記していたが、それらは『ヴィジョン』や『自伝』にも見出せるのである。ノグチの表明した『広重』の“simplicity”についての考えが、たまたまイェイツ自身が目指すものと似ており、その考えに共鳴したのであろう。それはただの日本の芸術に対するクリシェ、あるいは単純なオリエンタリズムとは少し違う側面を持つものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように、『骨の夢』について論文化するとともに、ヨネ・ノグチの『広重』とイェイツの関係について学会発表を行うことができた。これは前年度に立てた計画通りである。しかし、当該研究プロジェクト全体の当初の計画からすると、分析対象とする作品を変更したり作品数を絞るなどの方針変更があったため、その観点から言うと進捗状況はやや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度が研究計画の最終年度であるため、本研究計画全体のまとめを行う方向で研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定の国際学会が、オンラインでの参加となったため。当該繰越分の予算は速やかに図書購入費用に充てられる予定である。
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