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2022 年度 実施状況報告書

ハーレム・ルネサンス前期におけるアフリカ系アメリカ文学――詩、小説、演劇

研究課題

研究課題/領域番号 20K00395
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

奥田 暁代  慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (40296736)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードアフリカ系アメリカ文学 / 世紀転換期アメリカ文学
研究実績の概要

本研究は、ハーレム・ルネサンス前期(Pre-Harlem Renaissance)のアフリカ系アメリカ人作家をあらためてアメリカ文学史上に位置づけることによって、この時代の小説・詩・演劇の再考を試みるものである。具体的には、まず、アフリカ系アメリカ文学の流れ、とくに南北戦争前後のアンテベラム期からポストベラム期への継続性、そして世紀転換期からハーレム・ルネサンス期への連続性、を明らかにし、そのうえで、広くアメリカ文化のなかにこれらアフリカ系アメリカ人作家を位置づけ、これまで語られることが少なかった、人種を越えた関りの実態を示すことを目指している。
2022年度はまず4月に、黒人文芸雑誌の編集者であり自らも作品を執筆したポーリーン・E・ホプキンズが世紀転換期の雑誌に連載した小説に着目し、アフリカ系アメリカ人とネイティヴ・アメリカンとの関係性、その文化的交錯を考察する研究報告を国際学会で行った。7月には国内の学会において、世紀転換期から21世紀にかけて脈々と続く黒人オートダイダクトの伝統を考察した研究を報告した。これまで研究を続けてきたジョン・E・ブルース(2019年国際学会で口頭発表、2021年論文を刊行)とハーレム・ルネサンス期の重鎮として知られるアーサー・ショーンバーグを結びつけて論じ、いずれも独学者でありながらアフリカ系アメリカ人に関連する資料の発掘、収集、出版によって多大な功績を残した二人を、現在のアフリカ系アメリカ人知識人の源流として位置づけた。この論考を、秋には学会誌の原稿として執筆し投稿した。また、2021年に国際学会で研究報告を行った、詩人・小説家のアリス・ダンバー=ネルソンと白人出版代理人との関係に着目した論考を、海外の雑誌に投稿する準備を進めた。さらに、国際学会での研究報告を目指して、二人の女性劇作家・朗読家に着目した口頭発表のプロポーザルを提出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度も資料収集など渡航を伴う活動が行えなかった。しかし、アメリカ歴史家協会(Organization of American Historians)の年次大会において、ポーリーン・E・ホプキンズの小説に関して研究報告をすることができた。ホプキンズの研究は盛んであるものの、アフリカン・アメリカンとネイティヴ・アメリカンとの関係性、とくに文化的交錯を示したことが評価された。7月に多民族研究学会で発表する機会を得たため、19世紀末から続く、独学のアフリカ系アメリカ人の系譜を辿ることで、ジョン・E・ブルースなどすでに論考を発表している作家に限らず、アフリカ系アメリカ文学史上とても重要なアーサー・ショーンバーグについて論じることが可能となり、研究の幅を広げることができた。論文として学会誌『多民族研究』に掲載が決まっている。
投稿を終えた冬以降は、研究全体を俯瞰しながら、詩や小説についての研究報告が続いていることから、劇作家に着目することにした。これまでも取り上げてきたヘンリエッタ・V・デイヴィスを、同じように朗読家として知られたハリー・Q・ブラウンとあわせて論じることで、アフリカ系アメリカ人のコミュニティ形成と、白人聴衆との関り、海外公演の意義など幅広く調査・研究を進めている。“Henrietta Vinton Davis and Hallie Q. Brown: Elocutionists/Dramatists Performing beyond Borders and Creating National Identity”としてプロポーザルを投稿済みで、採用されれば9月下旬に国際学会(Southeastern American Studies Association)の年次大会で報告をする。
以上、海外渡航は叶わなかったものの、研究を続け、成果発表に繋げることができた。

今後の研究の推進方策

2023年度は、これまで同様まず国際学会での研究報告を実現する。ヘンリエッタ・デイヴィスやハリー・ブラウンといった黒人女性の活躍については、アメリカにおいてもあまり研究がなされてきておらず、朗読家・劇作家の活動を追うことで、世紀転換期の演劇・音楽の位置づけを明らかにすることができれば、重要な業績となる。報告によって評価が得られれば、The New England Quarterlyなどの学術誌への投稿を目指す。
研究報告がすぐに論文として発表できていないことは残念ではあるが、投稿論文に仕上げることに時間を要し、また投稿後の審査は半年ほどかかるところも多く、その後も修正を重ねるなどあるため、2年ほどかかってしまうのはやむを得ないだろう。昨年度目標として掲げていた、2021年度にアメリカ学会年次大会で報告したアリス・ダンバー=ネルソンと作家のネットワークとエージェントについての原稿を学術誌Legacy: A Journal of American Women Writersに投稿することを目指す。国際学会に参加し、海外の研究者と交流、意見交換することは研究成果をあげるために不可欠であるため、2024年度の学会報告を目指してプロポーザル提出も検討する。
これらの研究は英語での報告・執筆を行ってきているが、かねてから目指している、この時代の特徴を整理して一つの形にし、「ハーレム・ルネサンス前期の文学」として研究書にまとめることにも着手したい。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
2022年度についても本務校の業務のため海外渡航が叶わなかった。国際学会での報告もオンラインでの口頭発表となった。その結果、予定していた外国旅費を使用せず、英文校正などの謝金を使用するのみとなった。
(使用計画)
2023年度は、8月9日~8月15日の予定でノースカロライナ大学チャペルヒル校に滞在し、資料収集を実行する。さらに、まだ確定はしていないが、9月28日~9月30日にジョージア州アトランタで開催される学会に参加する。2回の渡航費用にあてる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] アフリカ系アメリカ人オートダイダクトの系譜19世紀から21世紀にかけて ――タナハシ・コーツの『美しき闘争』とポピュラー・カルチャー――2023

    • 著者名/発表者名
      奥田暁代
    • 雑誌名

      多民族研究

      巻: 16 ページ: 45~65

    • 査読あり
  • [学会発表] アフリカ系アメリカ人autodidactの系譜――タナハシ・コーツの『美しき闘争』とポピュラー・カルチャー――2022

    • 著者名/発表者名
      奥田暁代
    • 学会等名
      多民族学会

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公開日: 2023-12-25  

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