本研究は、ハーレム・ルネサンス前期(Pre-Harlem Renaissance)のアフリカ系アメリカ人作家をあらためてアメリカ文学史上に位置づけることによって、この時代の小説・詩・演劇の再考を試みるものである。具体的には、まず、アフリカ系アメリカ文学の流れ、とくに南北戦争前後のアンテベラム期からポストベラム期への継続性、そして世紀転換期からハーレム・ルネサンス期への連続性、を明らかにし、そのうえで、広くアメリカ文化のなかにこれらアフリカ系アメリカ人作家を位置づけ、これまで語られることが少なかった、人種を越えた関りの実態を示すことを目指している。 2023年度は資料収集のための渡航が実現したことが大きい。これまで国際学会での研究報告を続けてきており、海外の研究者から評価を得ることができた。しかし、投稿論文に発展させるには、さらなる一次資料による論拠が必要であり、2回の渡航により実現できた。とくに、著名な朗読家として知られたヘンリエッタ・V・デイヴィスとハリー・Q・ブラウンに関連する資料を集中的に探すことで、19世紀末から20世紀初頭にかけてアフリカ系アメリカ人女性が果たした役割について理解を深めるばかりでなく、芸術を介したコミュニティ形成や広くアメリカ文化との関連について全体像を描くことができるようになった。あらたな研究報告にも結びつけることができ、9月に開催された学会(Southeastern American Studies Association)の年次大会において、 “Henrietta Vinton Davis and Hallie Quinn Brown: Elocutionists/Dramatists Performing beyond Borders and Creating Spaces for African Americans”として研究報告を行った。
|