研究課題/領域番号 |
20K00398
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
小倉 いずみ 大東文化大学, 法学部, 教授 (00185563)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大西洋奴隷貿易 / Olaudah Equiano / John Newton / Abraham Lincoln / Ralph Waldo Emerson / ハーバード大学と奴隷制廃止 |
研究実績の概要 |
初年度の2020年はアメリカ学会の学会誌に英文論文"The Concord Community: Ralph Waldo Emerson and the Antislavery Movement”が掲載された。エマソンは1862年2月にリンカーン大統領と面会した際に『日記』に詳細にその様子を記したが、本稿は1861年末の外交問題だっだトレント号事件を扱いながら、リンカーン政権の閣僚との交流を描き、1840年代から60年代にいたる間にエマソンがどのように政治に関与したかを歴史的観点を入れて分析した。 研究発表に関しては、フィラデルフィアで開催予定だったが、コロナウイルスの感染拡大によりオンライン会議となったNortheast Modern Language Association 52nd Anniversary Conventionにおいて司会と発表の両方を担当した。セッションのタイトルは"Reform and Social Justice in 19th-century American Literature"で、アブストラクトは8人から提出されたため、パネルをPart 1とPart 2に分けて海外共同研究者のGary Grieve-Carlson教授と司会を分担した。小倉の発表はパート1で行い、エマソンがスミソニアン博物館で行った講演“American Civilization”と"Fortune of Republic"を分析した。司会を担当したパート2では19世紀の刑務所改革、ドイツ哲学とエマソン、鈴木大拙とエマソン、ウィリアム・ディーン・ハウウェルズに関する発表が行われた。 海外出張ができないため、資料は出来る限りオンラインで収集した。また会議はZoomで行ったが、ほとんど問題はなかった。細かい打ち合わせや人脈の開拓では問題はあるが、発表原稿を読むという点では通常の大会と変わりなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にすでに英文論文を出版し、研究は着実にスタートした。またコロナウイルスの下でも研究発表を行ったので、研究には全く支障がなかった。当初の計画では海外出張とアメリカの学会発表は研究の重要な部分だったが、Zoom会議などで十分に成果を上げることができていると思う。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はアメリカの奴隷制の始まりと展開について歴史的な資料を収集したい。18世紀英国の奴隷貿易廃止運動に重要な役割を果たした文書であるオラウダ・イクイアーノのThe Interesting Narrativeやジョン・ニュートンのThe Authentic Narrativeはすでに入手して分析したが、アメリカ側の一次資料が不足している。特に建国期から19世紀半ばまでの南部における奴隷の人口の拡大について数的分析が必要なので、国勢調査などを利用する予定である。またエマソンがヨーロッパ講演の際に面会したアレクシス・ド・トクヴィルに関して、彼の『アメリカの民主主義』を分析しながら外国人が見たアメリカの奴隷制を分析する予定である。 エマソンの著作に関しては、Later Lecturesの中の重要な講演を選び、南北戦争前後の彼の思想を解説する。また日本語に翻訳されていない講演を探して翻訳を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウイルス感染症の影響で、予定していたアメリカ出張ができなかった。その際に学会発表と資料収集、海外共同研究者との打ち合わせ、そして現地調査を行う予定だったがこれらも不可能となった。国内の学会も対面では開催されず、オンライン学会やZoom会議となった。東京都では緊急事態宣言が二度発令され、大学が海外出張や国内の遠方への出張を禁止したため、旅費は使用できなかった。 2021年度に海外出張が許可されれば2022年3月にアメリカに現地調査に行きたい。国内の学会は徐々に対面に移ると思われるので、学会出張を予定している。また同時にZoomでの会議が続く場合に備えて、デスクトップのパソコンを購入する予定である。
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