本研究は、英国スチュアート朝時代に王室メンバーのお抱えとなった商業劇団が宮廷・民間各々の演劇舞台でどのような劇をどのような演出で上演していたかを検証し、劇団活動が王制転覆に至る社会転換にどのように係わったかを明らかにした。 二代の王の宮廷では金銭上、モラル上の腐敗が進み、富裕層が集まる市井の室内劇場ではこれらを題材にする戯曲の上演が増えていった。一方、宮廷では王権神授説に基づくテーマのマスクが繰り返されていた。このように宮廷・民間の演劇舞台では、劇テーマの解離が時代と共に進んでいた。劇団はこの双方を行き来しながら、商業劇場で王政批判の芝居を上演し、その転覆に寄与したといえる。
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