本研究は19世紀アメリカ女性文学研究における「男女の領域分離」の妥当性を再考し、作品を「おば」(aunthood)という視座から検証することを目的とした。「完全な市民権」のない女性たちがいかに「市民」として行動し、自立した自己像を形成しうるのか。その過程に、姪(ないし「姪」に相当する人物)にたいする「おば」の介入の行為と影響力を見いだし、その解釈の可能性を試みた。家庭における男性性(夫、兄弟、息子)から独立しつつ、完全に家族・親族関係から切り離されていない「おば」という女性性には、伝統的な共和国理念と女性市民性という新旧の価値観を姪の世代に伝える役割があったのではないかと考察した。
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